国際相続の現場では、海外で残した遺言によって日本で相続手続きができるかどうかを検討する場面があります。そのため、国際相続では被相続人が海外で残した遺言について、日本での有効性を法的に判断できることが必須といえます。

大前提として、国際的な遺言について日本の法律では以下のように定められています。

法の適用に関する通則法
第37条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

本国法、つまり国籍がある国の法律によって、遺言の成立や効力が決まるということです。そもそも遺言という制度がない国を国籍にもつ人についてはどれだけ遺言を残したくても残せないということです。とはいえ、ほとんどの国では遺言の制度が整備されていますので、この条文はあまり気にする必要はないかもしれません。

次に遺言の方式(日本でいうところの自筆証書遺言や公正証書遺言など)について、以下のように定められています。

遺言の方式の準拠法に関する法律

第2条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。
一 行為地法
二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

「行為地法」とは、とある法律行為をする地の法律のことです。遺言を作成するなら遺言を作成する国の法律ということです。例えばイギリス在住の日本国籍の人がイギリスで遺言を作成する場合は行為地がイギリスなので、イギリスの法律に則ったやり方での遺言であれば日本でも有効ということになります。

状況別 遺言を残すパターン

遺言を残すパターンとしては以下の4通りが考えられます。

1)日本国籍の人が日本で遺言作成
2)日本国籍の人が外国で遺言作成
3)外国籍の人が日本で遺言作成
4)外国籍の人が外国で遺言作成

日本にある不動産を相続させるための遺言書を例にパターン化すると以下のようになります。

日本にある不動産を相続させる遺言 遺言作成者が日本国籍 遺言作成者が外国籍
日本国内で遺言作成 公正証書遺言・自筆証書遺言ともに作成できる 国籍がある国で遺言の制度があれば公正証書遺言・自室証書遺言ともに作成できる
外国で遺言作成 日本の方式の場合、自筆証書遺言なら作成できる

外国の方式でも作成できる

日本の方式の場合、自筆証書遺言なら作成できる

外国の方式でも作成できる

不動産に関する遺言についてはその不動産の所在地法(つまり日本の民法)が適用できます。ただし外国で作成する場合は日本の公証役場での公正証書遺言は作成できないため、作成するなら自筆証書遺言(またはその外国の方式で作成した遺言)が必要となります。

外国で遺言を残す場合は、その国の様式に従うか、日本の自筆証書遺言の方式に従うことが必要となります。ただし自筆証書遺言については印が必要なので、外国で自筆証書遺言を作成する場合には印を持っているかどうか注意しておきましょう。

👉今すぐ無料相談