常居所とは?

国際相続の仕事をしていると、「常居所」という言葉がしばしば出てきます。普段使わない言葉ですし、法律上も国際相続などの場面でしか出てこない概念です。国際的に「住所」という概念が国ごとに異なることから、国際相続などの適用のために「ハーグ国際司法会議」において創られた概念です。

常居所」とは、「人が常時居住する場所であり、一時的ではなく長期間にわたって居住する場所」のことです。ただ、この定義ではあいまいなので、以下のように常居所の認定基準が行政上定められています。

1)日本人の場合の常居所
・日本に住民票があれば日本が常居所
・日本からの出国後1年内であれば日本が常居所
・日本からの出国後1年以上5年以内で、かつ重国籍者でない場合は日本が常居所
・日本からの出国後1年以上5年以内で、かつ重国籍者の場合でもう一方の国籍の国に滞在している場合はその国が常居所
・外国に5年以上滞在している場合は、その国が常居所

2)外国籍の人の場合の常居所
・日本の在留期間が5年以上の場合は日本が常居所
・日本の滞在期間が1年以上で、かつ永住目的であれば日本が常居所
・日本で出生後、出国していない場合は日本が常居所
・日本人の子として出生した場合は日本が常居所
・特別永住者の在留資格をもって在留する場合は日本が常居所

上記の基準は行政上の判断基準であり、司法である家庭裁判所が従うべき基準というわけではありませんが、常居所の認定にあたって一定の考慮が行われるようです。

「住所」と「常居所」の違い

「住所」は法律上住民票などを置いている場所、「常居所」は住んでいる(あるいは住んでいた)という事実をベースに判断される概念となります。