養子縁組と相続の関係

養子縁組とは、血縁的には親子関係にない人について法律上の親子関係を成立させる手続きです。養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があります。相続の現場では、養子縁組というと通常は普通養子縁組を指すことが多いです。

養子縁組を行うことで、以下のような効力が発生します。

民法 第809条
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。

つまり、養子縁組の日から養子は養親の法律上の子として扱われます。それに伴って、相続においては以下のような影響があります。
1)遺産分割協議においては、実子のほかに養子も参加することになります。(養子が相続放棄した場合を除く。)
2)実子がいない被相続人については、養子縁組によって養子が相続権を取得するため、養子が相続放棄しない限り、直系尊属や兄弟姉妹には相続分が発生しません。
3)相続税の計算においては、以下のように基礎控除、生命保険金や死亡退職金の非課税限度額の額が上昇します。

被相続人に実の子供がいる場合 1人分
被相続人に実の子供がいない場合 2人分

法律上は養子縁組する人数に制限はありませんが、相続税の計算においては、最大でも2人分までの算入となります。養子縁組をすることで相続税の計算上のメリットはありますが、もし養子と実子の関係性が希薄であれば、その分遺産分割協議などでもめる可能性があるかもしれません。そのため、養子縁組は相続対策というよりは、実子と同じように財産を残してあげたいというくらいに思える人を縁組し、その結果相続税のメリットも享受できたという文脈で語られるべきものだといえます。

また、養子縁組の前後で養子の子の代襲相続についての取り扱いが変わってくることがあるので、その点は注意が必要です。

普通養子縁組の要件

普通養子縁組については、基本的には養親と養子双方が養子縁組する意思があることと、その旨の届け出を市区町村に行うことの2点を満たすことで成立します。

ただし例外的に普通養子縁組で家庭裁判所の許可が必要な場合があります。それは未成年者、つまり18歳未満を養子とする場合です。

民法 第798条
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。

未成年者を養子とする場合には、未成年者の保護のために家庭裁判所の許可が必要となっています。これは15歳未満の者を養子にするために法定代理人(親権者または未成年後見人)の代諾を行う場合でも必要です。ただし、直系卑属を養子にする場合、つまり配偶者の連れ子を養子にする場合や祖父母が孫を養子にする場合には家庭裁判所の許可は必要ありません。

ちなみに、年上の人や、尊属を養子にすることはできません。

そのほかの養子縁組の要件については、こちらのページに詳しく書きましたのでご覧ください。

なお、他人の子を自らの子として届け出ることが養子縁組の意思表示になるかといえばそんなことはありません。養子縁組は法律上の手続きを踏む必要があるので、他人の子を実子として届け出た場合には親子関係不存在確認の訴訟が必要となります。