公証人は法律のプロから選ばれる国家公務員

相続の仕事をしていると、公証人とかかわることが多くあります。

例えば以下のようなケースで公証人と関わることになります。
・公正証書遺言の作成
・遺産分割協議公正証書の作成

また、株式会社や一般社団法人の設立などでは定款認証時にお世話になります。

公証人は、原則として30年以上の実務経験を有する法律家(判事・検事・弁護士など)から国が任命する国家公務員です。

国家公務員である公証人が業務を行う公証役場は法務局や労働局などと同じように国の役所ということになります。

公証人は法律のプロであり、さまざまな法律文書について、内容を確認の上認証を行うなどして、その文書にお墨付きを与えてくれます。そのため公証人の果たす役割は、将来の紛争を防止する「予防司法」です。例えば、公正証書遺言であれば自筆証書遺言に比べて、事前に公証人が確認してくれるため漏れもなく、かつ自筆証書遺言のような家庭裁判所での検認も不要です。これは法律のプロである公証人の目を通している遺言だから間違いないということの表れです。このように、公証人の業務には将来の紛争(相続であれば相続人間の紛争)を防止する役割が期待されています。

公証人とほかの国家公務員の違い

公証人は国家公務員ですが、その他の公務員と決定的に異なる点があります。それは、公証人は国家公務員でありながら個人事業主であるということです。

通常の公務員であれば、役所から決められた給与を受け取ります。しかし公証人は定められた手数料に従って公正証書遺言の作成や定款の認証などの業務を行い、その手数料をもとに自らの生活費や、公証役場の家賃、公証役場で働く書記の給与などを支払っています。つまり、利用者からの手数料が売上ということになります。一般の個人事業主との違いといえば、そのサービスが自由に値付けできずあらかじめ決められていることや、国によって公証人が任命され、公証人の人数も国が決めているため、収入としては保護されている点です。

公証人への相談

公証人が行う業務はあらかじめ国によって定められていて、その料金も決められています。また、その業務の範囲での相談は無料です。例えば、公正証書遺言を作成したい場合の事前に文案を作成してもらうなどの業務は費用が掛かりません。弁護士などは1時間いくらといったタイムチャージを取っているケースもありますが、公証人はそのような請求はできないということです。

また、相談する公証役場も指定されるわけではありません。ただ、打ち合わせのしやすさや日当や交通費実費などは手数料とは別途利用者に請求できることを考えると、近くの公証役場に相談するのがよいでしょう。