プロベートとは日本の「検認」とは異なる

プロベート(probate)とは、直訳すれば遺言検認のことであると紹介されることがあります。日本でも家庭裁判所による遺言の検認手続きがあります。しかし、国際相続の現場においては遺言の検認、つまりプロベートの意味合いはかなり異なります。

日本における遺言の検認とは、公正証書遺言以外の遺言について、遺言書の形式や記載の方法について家庭裁判所にて確認し、正に被相続人本人が民法の規定に従って作成したものであることを確認するとともに、後日の偽造や変造を防止することを目的としています。遺言書の検認はいわば遺言書という相続の方向性を決める書類についての証拠保全としての手続きです。日本の民法で定められた遺言書の検認手続きでは、形式的な調査は行われますが、その内容が被相続人の真意に基づいているかということや遺言の内容が法的に効力を発生するかどうかということまで判断するものではありません。

一方で、国際相続でいうところのプロベートは日本で行われている遺言の検認とは大きく役割が異なります。国際相続でいうところのプロベートとは、遺言が被相続人によって確かに作成されたということを確認するだけではなく、遺言の内容を実行するところまでを含んでいます。こうした違いがあるのは、日本などとアメリカなどでは相続手続きのとらえ方に違いがあるためです。

「包括承継主義」の検認と「管理清算主義」のプロベート

日本では、相続が発生すると、特段の手続きを踏まなくても、被相続人の死亡という事実をもって被相続人がもつ預貯金や不動産などの資産や借金などの負債などはすべて相続人や受遺者に移転します。この相続の考え方を「包括承継主義」といいます。

一方、アメリカやイギリスなどでは被相続人が死亡しても直接相続人や受遺者に権利が移転するわけではありません。被相続人の財産はいったん財団(estate)となり、裁判所のもとで相続資産の中から相続債務の弁済が行われます。そのうえで残った資産が相続人への分配の対象となります。この相続の考え方を「管理清算主義」といいます。

そして、管理清算主義のもとで裁判所によって行われる相続財産の管理・清算の手続きを「プロベート」といいます。そもそも日本に管理清算主義という考え方がないため、プロベートの訳語として「検認」という言葉があてがわれていますが、日本の家庭裁判所で行う遺言書の検認は、プロベートの手続きでいうことろのほんの一部に過ぎないということです。