遺産分割協議書への押印は各相続人の実印で行う

相続が発生して、相続人が複数いる場合には一般的には遺産分割協議書を作成します。法定相続で相続するのであれば各種手続きを進めるうえで、必ずしも遺産分割協議書を作成する必要はありません。しかし、法定相続での相続だったとしても、法定相続分での分割に相続人で合意したということで遺産分割協議書を作成したほうがよいでしょう。

一般的には遺産分割協議書には、各相続人が署名・押印を行います。1枚ではなく、各相続人が同内容の遺産分割協議書複数枚に各自署名押印する形でもOKです。それではこの押印はどの印鑑で行うべきでしょうか?答えは、「実印」一択です。実印で押印して印鑑証明書を遺産分割協議書に添付することで、その分割が正に相続人の意思に基づいて行われたということを証明します。

印鑑証明書には法律的な期限は定められていませんが、各種手続きで期限が定められていることがあります。一般的には金融機関の相続預金の解約手続きでは、各相続人(相続放棄をした相続人を除く)の印鑑証明書は6か月以内のものの提出が求められます。

ただし、海外在住の相続人のように日本での印鑑証明書の発行ができない場合には、遺産分割協議書に署名した署名について署名証明書をつけてもらうことで対応します。

遺産分割協議書の押印が認印でも足りるケース

例外的に遺産分割協議書に押印する印鑑が認印でも足りるケースがあります。それは、相続財産が不動産だけで、押印者が不動産を相続する相続人であるケースです。例えば、ABCの3人の相続人がいて相続財産が不動産だけのケースで、Aが相続したとします。この場合、遺産分割協議書に押印した印についてAは認印でも相続登記の手続き上は問題ありません。Aは不利益を受けるわけではないので、実印である必要はないということです。BCは実印を押印して印鑑証明書を添付する必要があります。そして、相続財産が不動産のみであれば遺産分割協議書も法務局での相続登記手続きにしか使用しないので、Aが認印で遺産分割協議書に押印したからといって手続き上は事足りるということです。

不動産以外にも相続財産があれば原則に従ってAも実印を押印すべきです。現預金などほかの相続財産についての分割が記載されていても、相続登記自体は不動産を相続する相続人については認印で押印していても登記手続き可能です。しかし相続登記手続きができたとしても、その他の手続き(金融機関の口座解約手続きなど)の段階ではAも実印を押印することが求められるためです。