アメリカ国籍の被相続人の本国法の決定

アメリカでは、州ごとに法律が異なる「場所的不統一国」です。このように一つの国でいくつかの法の適用がある場合、以下のように定められています。

法の適用に関する通則法(本国法)
第38条 (中略)
2 (中略)
3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

アメリカの場合は、「その国の規則に従い指定される法」というものが存在しないため、「当事者に最も密接な関係がある地域の法」を本国法として適用することになります。この場合の「密接な関係がある地域」とは、アメリカ国内における地域を指します。

密接関係地とは?

それでは、「当事者に最も密接な関係がある地域の法(密接関係地法)」とは何を指すのでしょうか?この考え方は国際相続など国際的な法律関係に独特の概念です。「密接な関係」について法律で基準などが示されているわけではありませんが、実務上は被相続人の出生地・居住していた地・親族の居住地などを総合的に見てケースごとに判断することになります。

密接関係地を決めるのにドミサイルが重要

国際相続の現場において重要になるのが「ドミサイル」という概念です。ドミサイルとはアメリカやイギリスなど英米法系が適用される国籍の被相続人の場合に重要になります。

ドミサイルは、日本でいうところの税法上などの「住所」に近いイメージで、「固定的な生活の本拠を持っている場所」をいいます。生まれてすぐのドミサイルドミサイルオブオリジン(domicile of origin)、その後生活基盤の移転とともに移転したドミサイルドミサイルオブチョイス(domicile of choice)といいます。このようにドミサイルはその時その時で一人に1つです。多拠点生活といったスタイルもありますが、そんな人でもドミサイルはどこか1か所に決定されます。

アメリカ国籍の被相続人の法律適用関係は?

結果的に、アメリカの場合は密接関係地を確認するには「ドミサイル」を確認することになります。特に日本でアメリカ国籍の被相続人について相続手続きをする場合には、一般的にはドミサイルオブオリジンを密接関係地としてを本国法を適用するということになります。例えばニューヨーク州生まれであれば、ニューヨーク州がドミサイルオブオリジンとなり、ニューヨーク州法が本国法になるということです。

ただし、他の事情を勘案して他州をドミサイルドミサイルオブチョイス)にした方がよいというケースでは、その州の法律を本国法として適用することも可能です。

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