真正な登記名義の回復とは?

親のAさんが1人で購入した不動産だけど、なぜか子であるBさんと共有での所有権登記を行ってしまったというようなケースがあります。このときに、Aさん単独名義に登記を修正したいというときに使うのが「真正な登記名義の回復」という手続きです。

真正な登記名義の回復を申請できる要件としては、以下の3つを満たす場合と言われています。

1)不真正な登記名義の存在
2)申請人が真の所有者であること
3)真正な登記名義の回復によらなければならない事実

例えば、
1)配偶者が単独購入した不動産を夫婦共有名義にしてしまったケース>購入した配偶者の単独所有に修正
2)DさんがEさんとFさんの2名に不動産を二重譲渡してしまった場合で、本来はEさんとの契約が有効だったのに、Fさん名義で所有権の登記が行われてしまったケース>Eさんに所有者を修正

といったケースでも「真正な登記名義の回復」の出番となりえます。

ただし、この「真正な登記名義の回復」というのは、不動産登記の上では正に奥の手です。不動産登記というのは権利の変動をその原因も含めて正確に記録していくのが原則です。本来、不動産の所有権の移転が発生するには、「売買」や「贈与」、「相続」といった法律行為や、「時効取得」などの事実行為が必要です。いずれも民法などに規定されている事項です。

一方、「真正な登記名義の回復」は最初の例でいえば、登記記録上は子であるBさんから親であるAさんに所有権が「移転」します。しかし現実にはAさんとBさんの間にはなんの契約もありません。あるのは、ただ最初の登記が間違っていたという事実です。そのため、本来であれば最初の共有名義での登記を抹消、もしくは更正登記を行うのがあるべき姿です。しかし、「真正な登記名義の回復」という手続きが存在しているのには理由があります。それは、抵当権が設定されているというように第三者が絡む場合です。

もし抵当権がその不動産に設定されていると、登記を抹消したり更正したりするには抵当権者(例えばお金を貸した金融機関など)の承諾が必要となります。なぜなら、登記の抹消や更正によって、もともとの登記がなかったものとなりますので、抵当権も消滅してしまうためです。現実的には、抵当権者もいったんお金を貸した以上、こうした承諾に応じて抵当権が抹消されることを承諾することは考えられません。そのために存在しているのが「真正な登記名義の回復」です。この手法なら、抵当権者の承諾も必要ありません。(その分、所有権の移転を受ける人からすれば、他人の借入金を自分の不動産で担保することになりますが。)

結局、「真正な登記名義の回復」は、本来登記の抹消や更正で対応すべきところ、抵当権者などの利害関係者が存在していて、その承諾を得られないときのために設けられた裏技的なシステムということです。

真正な登記名義の回復と税金の関係

所有権移転には、何かしらの税金が絡んでくることが多いです。売買なら所得税、贈与なら贈与税、相続なら相続税といった形です。それでは、真正な登記名義の回復についてはどうでしょうか?

この場合、もともと間違っていた登記をあるべき姿に戻す登記で、便宜上所有権移転の形式をとっているだけです。そのため、真正な登記名義の回復を行ったことによって課税が発生することはありません。

むしろ、本来Aさん単独所有の物件を、AさんとBさんが共有名義で登記されていて、ただローンはAさんの持ち金で支払っているというケースでは、形式的にはBさんのローンをAさんが肩代わりしているということでAさんからBさんへの贈与が発生しているととらえられる可能性もあります。

いずれにしても、実態と異なる登記記録となっている場合には、速やかに修正を行うことをオススメします。ただし、登記の状況によって抹消、更正、真正な登記名義の回復と採るべき方法が異なってきます。そのあたりは司法書士にご相談いただくとよいでしょう。当事務所であれば、真正な登記名義の回復について、登記と税金の両面からアドバイスできます。お気軽にご相談ください。

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