代償分割による登記は共同申請

代償分割とは、相続人が特定の不動産などを相続する代わりに、その相続人が所有する財産を他の相続人に譲渡することです。代償分割で譲渡するのは現金で行うケースが多いですが、不動産を譲渡することもできます。

不動産を代償分割で譲渡した場合は、不動産の所有権が譲渡した相続人から譲り受けた相続人に移転しますので、その登記が必要となります。代償分割は、遺産分割協議のなかで行われることですが、被相続人の不動産ではなく相続人固有の不動産を譲渡することになりますので、登記手続きは、譲渡した相続人と譲り受けた相続人が共同申請で行います。

代償分割による登記で必要な書類

1)遺産分割協議書(代償分割を行った旨が明記されたもの)
2)譲渡した相続人の印鑑証明書
3)対象不動産の登記識別情報または登記済証
4)譲り受けた相続人の住民票
5)被相続人の出生から死亡まで戸籍や相続人全員の戸籍など相続関係が明らかになる戸籍一式(または法定相続情報一覧図
6)2)以外の相続人全員の印鑑証明書

通常の共同申請と異なる点は、5)、6)のように通常の相続登記と同じく戸籍や相続人全員の印鑑証明書が必要になる点です。これは、遺産分割協議が相続人全員の合意により有効に成立していることを証明するためです。遺産分割協議は相続人全員で行うものであるため、代償分割が相続人の一部での譲渡だとしても、全員の協議の中で決められたものである必要があります。代償分割で不動産を譲渡する相続人の印鑑証明書だけでは足りないということです。

登録免許税は不動産評価額の1000分の20(0.2%)です。

代償分割による登記と住所変更

不動産を代償分割するケースは、譲渡する相続人が実際には住んでいない不動産が中心となります。そのため、登記名義人の住所変更が済んでいないケースが多いです。その場合は、代償分割による所有権移転の登記を行う前提として、相続人の住所変更の登記が必要となります。被相続人名義の不動産であれば、住所が変わったことが分かる書類(住民票の除票や戸籍の附票)を添付して相続登記が申請できますが、代償分割による登記は相続登記ではないので、登記名義人の住所の変更を登記記録に反映する必要があります。

代償分割による登記と税金

代償分割による登記では、登記原因は、「遺産分割による贈与」となります。しかし、実態は相続財産を取得するために、その分自分の財産を犠牲にしたということで、代償分割で相続財産を取得した相続人にとってはコストを負担していることになります。

そのため、代償分割では贈与税は課税されず、相続税の枠組みで税金を計算することになります。もともと相続税が基礎控除以下であれば、代償分割で不動産を譲り受けた相続人には相続税も贈与税もかからないということになります。

ただし、代償分割で不動産を譲渡した相続人は、自己の不動産を譲渡することで相続財産を取得できたということで、不動産譲渡の所得税がかかります。現金をもとに代償分割を行った場合とは異なり、不動産を譲渡して代償分割を行った場合には、譲渡した相続人がその分の確定申告をしなければならないので必注意しましょう。

当事務所では、代償分割による遺産分割協議書の作成から、登記申請まで一貫して行っています。また、確定申告など税務面でもサポートも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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