相続登記の義務化について施行時期が迫ってきました。改めて相続登記の義務化とその周辺の改正情報についてまとめてみます。いずれも改正の根底にあるのは所有者不明土地の解消です。

所有者不明土地とは以下のような土地をいいます。
①不動産の登記記録から所有者が直ちに判明しない土地
②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

所有者不明土地は多くは市場価値がなく相続などで取得した人にとっても相続登記をするようなインセンティブは働きません。一方で所有者不明土地が触れると、管理がされず土地が荒れて災害のもとになったり、公共事業などが円滑に進まなかったりというようにさまざまな弊害があります。

所有者不明土地が発生するのは、
1)相続発生後に相続登記を行っていない
2)所有者が住所変更したが、住所変更登記を申請していない
といったパターンがあります。中でも相続登記の未申請は、代を重ねれば重ねるほどに関与する相続人が増加し手続きが困難になることから相続登記の義務化は改正の本丸といえます。

そこで一連の改正法では所有者不明土地の防止を第一としつつ、相続人の負担軽減策も盛り込みつつ、以下のようなスケジュールで実施されます。

時期 改正項目 内容
2023年4月1日施行 相隣関係規定の見直し 越境してきた木の枝の切り取り方法について
共有制度の見直し 共有者不明の共有物の利用の円滑化
財産管理制度の見直し 所有者不明・管理不全の土地・建物管理制度等の創設
相続制度の見直し 長期間経過後の遺産分割の見直し
2023年4月27日施行 相続土地国庫帰属制度の創設 相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度
2024年4月1日施行 相続登記の申請義務化 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を義務付ける制度
相続人申告登記制度の創設 相続人が法定相続人であることを法務局に申し出て、登記に記録されることで相続登記の義務を履行したことになる制度
公布後5年を超えない範囲内で政令で定める日 住所等の変更登記の申請義務化 住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける制度
所有不動産記録証明制度の新設 特定の者が登記名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行する制度
登記名義人の死亡等の事実の公示 法務局が他の公的機関と連携し、住基ネットなどのシステムから死亡等の情報を取得し、登記記録に職権で表示する制度

改正の本丸は相続登記の申請義務化ですが、相続登記の申請をやりやすくしたり、相続人申告登記のように他の方法で義務を履行したことにするように環境を整えることで、相続人の負担を軽減しつつ、所有者不明土地の撲滅を図っています。

相続人としては、不要な土地を相続して登記申請まで義務付けられるというのは納得いかない面もあるかもしれませんが、預金は相続の手続きを行うけど不要な土地は放置するといった相続のいいとこ取りができなくなるというようにとらえて協力していくことが必要になるでしょう。