時効取得にかかる税金は所得税と住民税

例えば不動産を時効取得した場合、時効取得した人にとっては占有していたという事実はあるにせよ、金銭的な負担なく不動産を手に入れたということになります。これは不動産でなくても同じ話です。もし賃料などの金銭的な負担が伴っているのであれば、その段階で他主占有、つまり自分で所有の意思を持って占有する自主占有とは扱われないため時効取得も成立したいためです。

それでは、金銭的な負担なく資産を取得したということで、時効取得者には何らかの税金が課税されるのでしょうか?無償ということでまず思い浮かぶのが「贈与税」です。しかし時効取得は、贈与とは全く異なります。

民法 第549条
贈与は、当事者の一方がある財産権を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

このように、贈与が成立するには、一方からの贈与の意思表示と受ける人の受諾の意思表示がないと成立しません。同じ無償での資産の移転でも、占有という状態から発生する時効取得贈与ではまったく内容が異なります。つまり、贈与が成立したことを前提に課税が行われる贈与税時効取得では課税の対象にできないということになります。

どれでは時効取得をした場合に課税される税金は何かということですが、結論から言えば、時効取得で課税されるのは所得税(+住民税)です。

時効取得による取得は「一時所得」

時効取得は、所得税のうち「一時所得」として課税されます。一時所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価以外の一時的な所得」ということで、まさに時効取得のように仕事の対価ではなく受けた経済的利益のための所得区分です。

時効取得の場合は、取得時効により取得された財産の時効取得時の時価が経済的利益となり、時効取得が完成した年の確定申告で申告することになります。時効取得の中でもメインのケースである土地であれば、路線価ベース(路線価がなければ倍率表ベース)で評価した額が時価となり課税が行われます。

ただし、時効取得のために直接要した費用(例えば裁判のための費用や時効取得による所有権移転登記の費用)などは控除することができます。固定資産税のように、そもそもその土地を自己の土地と考えて支払っていたものについては、時効取得のための費用とは言えないため、引くことはできません。

時効取得による一時所得の計算式

一時所得の金額=時効取得した土地等の財産の時価(路線価or倍率表) - 土地等の財産を時効取得するために直接要した金額 - 特別控除額(最高50万円) 

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