特定財産承継遺言とは

特定の財産、例えば不動産や特定の口座の現預金などについて、特定の相続人に「相続させる」旨の遺言を「特定財産承継遺言」といいます。法的な性質としては、遺言で遺産分割の方法を指定しているといったことになります。

被相続人による遺産分割の指定については、民法上以下の条文があるのみです。

民法 第908条
  1. 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

このため、「相続させる」旨の遺言は、過去の判例に基づいて、遺産分割方法の指定として解釈されています。遺産分割方法の指定ということは、その旨を反映させた遺産分割協議書を作成する必要があるのかとも思えますが、特定財産承継遺言が作成された時点で、遺産分割の方法の指定があったものとして扱われます。

なお実務上、公正証書遺言であれば、相続人が財産の取得者になる場合は、特定財産承継遺言、つまり「相続させる」とすることが一般的です。

特定財産承継遺言と遺贈の違い

特定財産承継遺言と遺贈は似ていますが、いくつかの異なる点があります。まず異なる点として、不動産が対象財産となったときの登記手続きがあります。

特定財産承継遺言 遺贈
登記原因 相続 遺贈
申請人 相続人の単独申請 受遺者とその他相続人(または遺言執行者)の共同申請

ただし、相続人が受遺者であれば遺贈の登記の単独申請も可能

登録免許税 不動産評価額の0.4% 不動産評価額の2%

見れば分かるように、遺贈に比べて特定財産承継遺言のほうが圧倒的に手続き面や、費用面からメリットがあります。そのため、公正証書遺言を作成する際に、公証人は「相続させる」の言葉を使います。被相続人としても、最終目的は特定の財産と特定の相続人に渡すことなので、遺言上の言葉遣いについては、その目的を達成するために最も相続人の手間にならないようにしたいでしょう。

特定財産承継遺言と登記の原因の関係

遺言上の書き方によって、相続登記の登記原因は以下のように分かれます。

遺言上の文言 登記原因
相続させる 相続
贈与する、遺贈する 遺贈
取得する、○○のものとする 相続

被相続人が亡くなったあとになっては、その意図は遺言書の記載から判断するしかありません。そして、民法上、相続と遺贈で厳密に区分されている以上、遺言書で「遺贈する」となっていれば、その相手が相続人でも、それは遺贈として扱うべきということです。

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