尊属と卑属

相続関係の条文には、たまに尊属や卑属という言葉が出てきます。尊属や卑属とは、親族の中で特定の関係を指す用語です。

相続では、以下の相続でも最も基本となる法定相続分を定めた条文で尊属や卑属といった言葉が出てきます。

民法 第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

尊属とは自分より上の代の親族、卑属とは自分より下の代の親族を指します。

尊属 自分より上の代 父母、祖父母、叔父叔母
卑属 自分より下の代 子、孫、甥姪

それでは同じ代に属する親族、つまり兄弟姉妹はどうなるのかといえば、尊属でも卑属でもありません。

尊属の「尊」は地位が高い、卑属の「卑」は地位が低いといった意味があります。なにやら時代錯誤的な感じを受ける用語ではありますが、ある程度浸透している言葉遣いなので変更するのは難しいのかもしれません。仕方ないので地位を年齢に置き換えて考えるしかないでしょう。(もちろん年齢が高いから地位が高い、年齢が低いから地位が低いといった感覚は今の時代には即していないとは思いますが。)

直系と傍系

親族用語には、さらに直系と傍系という言葉があります。直系とは縦につながっている親族です。傍系とは横につながっている親族です。

尊属と卑属、直系と傍系を組み合わせると4通りのパターンができます。さらにどこにも該当しない兄弟姉妹を合わせると、全部で5つのカテゴリができます。直系尊属、傍系卑属といった感じで呼びますが、兄弟姉妹はどこにも該当しないので兄弟姉妹のままです。

親族関係 直系 傍系
尊属 父母、祖父母など 子、孫など
卑属 叔父叔母など 甥姪など
それ以外 兄弟姉妹