相続財産清算人とは

誰かが亡くなったときに、相続人は必ずしもいるとは限りません。配偶者や子、父母や兄弟姉妹がいない人が亡くなった場合、その人には相続人がいません。それでは、その人の財産はだれのものになるのでしょうか?

民法では、相続人がいない場合には、以下のように定められています。

第951条
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

第952条
  1. 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
  2. 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

「相続人のあることが明らかでない」というのは、相続人がいるかどうかはっきりしない場合をいいます。戸籍を見ればわかるじゃないか、というようにも思えますが、もしかしたら戸籍には載っていない相続人(例えば婚外子)などがいるかもしれませんので、法律上は、いきなり「相続人がいないとき」ではなく、「相続人があることが明らかでないとき」となっています。戸籍上相続人がいないケースのほか、戸籍上の相続人が全員相続放棄をしたり、相続欠格や廃除となったりした場合も含みます。ただし、戸籍上相続人がいるけど所在が不明といったケースでは失踪宣告や不在者財産管理人制度の出番となるので相続財産清算人の出番はありません。

相続財産法人とは?

相続財産法人とは、持ち主の死亡によって所有者がいなくなってしまった財産の持ち主を作り出すために、法的に用いられる概念的な存在です。そして、この相続財産法人の財産を管理するために家庭裁判所によって選任されるのが相続財産清算人です。

相続財産清算人と相続財産管理人の違い

実は、2021年の民法改正前は相続財産清算人ではなく相続財産管理人と呼ばれていました。しかし、相続人の不存在によって

他方、相続財産管理人とは以下のようなケースで相続財産清算人と同じく利害関係者等の請求によって家庭裁判所が選任します。
1)相続人がいるが、遺産分割協議が未了のままで、相続財産の管理をする人がいないケース
2)相続人がいるかどうか不明な状態で、相続財産清算人の選任も行われておらず、相続財産の管理をする人がいないケース

ただし、2)のケースは通常であれば財産の整理のためにも相続財産清算人の選任が行われるのが通常なので、相続財産管理人は主に1)のケースで利用される制度です。

また、相続財産管理人の職務は相続財産の保存行為に限られ、債権者への支払いなどの処分行為を行うことはできません。相続財産清算人と相続財産管理人は似ている名称ですが、その職務は全く異なります。

相続人の不存在が確定するまでの流れ

家庭裁判所は相続財産清算人を選任した場合には、以下の3つの公告を行います。
1)相続財産清算人の選任の公告(6か月間)
2)相続人の捜索の公告(6か月間)
3)相続債権者等に対して請求の申し出をすべき旨の公告(2か月間)
この2つの公告は並行して行うことができますので、早ければ相続財産清算人の選任から6か月ちょっとで相続人の不存在が確定することも可能です。

民法改正前は、1)の公告、3)の公告、2)の公告の順に行わなければならなかったため、早くても10か月以上かかっていたのですが、民法改正により公告期間が短縮されて相続人の不存在が早く確定できるようになりました。