相続放棄しても相続財産の管理はしなければならない

相続放棄をした相続人は、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。つまりその相続についてはいわば他人として扱われます。しかし、相続放棄をしたとはいえ元相続人である以上は何かしら相続財産が手元にあるということも考えられます。相続財産は相続人の共有の持ち物となります。つまり相続放棄をした相続人にとって、手元にある相続財産は他人の物を預かっているということになります。

相続放棄をしたから相続手続きには関係なくなったとはいえ、他人の物を管理する以上全く関係ないといって適当に扱うわけにはいきません。そこで、民法では以下のように相続放棄をした者による相続財産の管理について定めています。

民法  第940条

  1. 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

「占有しているときは」と定められているので、占有していない、つまり手元にない相続財産についてまでは相続放棄した者は管理する義務を負いませんが、少なくとも手元にある相続財産については、次順位の相続人などに引き渡すまでは、管理をしなければならないということになります。相続放棄したからあとは知らない、というわけにはいかないということです。

万が一管理していた相続財産について、次順位の相続人が受領を拒否したらどうなるのでしょうか?その場合は、相続財産を供託するなどして管理業務を終了させることになります。また、相続人のほか相続財産管理人などへの引き渡しも可能です。