いまでは行政を中心に押印廃止の流れが加速していますので、ハンコを押すといった場面は以前に比べてかなり減りました。実際司法書士の仕事の現場でも押印廃止の流れの中で、実印以外を押印するということはかなり減りました。

金融機関では書類受取の際にいまだに認印を押印させるところがありますが、認印という文化も随分と衰退しました。昔は認印といえども一種のアイデンティティ的な側面もあったかもしれませんが、今では100円ショップでも簡単に認印が買える時代になりました。(そんな100円ショップでも認印文化の衰退で、徐々に認印コーナーを撤去しているようですが。)契約書も電子契約書が普及してきているため、契約書への押印という場面も減ってきているかもしれません。

そんな押印について、今更ながら用語解説してみようと思います。押印文化が縮小しているとはいえ、サイン文化がない日本ではまだまだ実印は現役で活躍していますし、改めて整理してみます。

1)契印

複数枚にわたるページに同じ印を押印することで、それぞれのページが一連の書類であるということを表します。ページ間に押印する方法のほか、それぞれのページの余白(右上など)に押印する方法があります。ページにまたがって押印する方法にしても、それぞれのページに同じ印を押印する方法にしても、いずれにしても複数ページが一連の書類であることを示すことができます。

これを契印といいます。

2)割印

上記の「契印」の意味で割印という言葉を使用することがありますが、厳密には両者は異なります。割印とは、例えば一つの契約書に当事者が2枚にまたがるように押印することで、契約書などの書類が確かに両者の意思に基づいて作成されたことを示すときに使用されます。2枚にまたがって押印された書類を改めて合わせた時に印鑑が照合できれば、その2枚の書類が各当事者の意思で作成されたことが証明できます。

また、印紙を貼るときに、書類本体と印紙にまたがって押印する場合にも割印という言葉が使われます。

法律家は契印と割印を明らかに区別して使うことがありますが、日常では契印の意味で「割印」という言葉を使うことも多いです。特にページ間に押印する場合は印影がページにまたがって割れるので割印なイメージがあるのも無理はありません。正直なところ、上記の区別はうんちく程度にとらえておいても支障はないです。