限定承認に支障が出そうなケース

相続の限定承認は、相続人全員で行う必要があります。(相続放棄をした者を除く)しかし、相続人の人数が多いほどに話がまとまらなかったり、そもそも一部の相続人に限定承認するのに差し支える事情が発生したりするケースがあります。

限定承認の可否が問題になるのは、主に以下のケースです。
1)相続人の一部に法定単純承認事由が発生している場合
2)相続人の一部について熟慮期間が経過している場合

相続人の一部に法定単純承認事由が発生している場合の限定承認

法定単純承認事由とは、民法第921条では、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは単純承認したものとみなす旨が定められています。そのため、一部の相続人が、例えば相続預金を私的に消費するなどして法定単純承認事由が発生していると、限定承認はできなくなるのではと思われます。

この点は、家庭裁判所に限定承認の申し立てをした時点で、すでに相続財産を処分したことが明らかであれば限定承認はできないという扱いになっています。一方、限定承認の申し立てが家庭裁判所に受理されたあとに相続財産の処分の事実が分かった場合には、限定承認の申し立て自体は有効に扱われます。ただし、相続財産の処分をした相続人については、限定承認をした場合でも、みずからの法定相続分の範囲で相続債務を弁済する必要があります。

相続人が子A,子Bで、プラスの遺産が300万円で相続債務が500万円のケースで、Bに単純承認事由が発生している場合を例にとってみましょう。この場合限定承認ができたとしても、Bは250万円の相続債務の弁済義務が発生するということになります。(Aは限定承認の効果で、相続するプラス財産150万円の範囲で相続債務を弁済すればよいということになります。)

相続人の一部について熟慮期間が経過している場合の限定承認

熟慮期間の起算点は相続人によって異なるケースがあります。そのため、場合によっては限定承認を申し立てようとする段階で、すでに一部の相続人について熟慮期間が経過していることもあり得ます。この場合では、その他相続人が熟慮期間内であれば、熟慮期間を過ぎてしまった相続人を含めて、相続人全員での限定承認の申し立ては可能となっています。

限定承認を行うべきかどうかの状況判断は、さまざまな検討事項があり複雑です。相続が発生して、限定承認をお考えの場合はぜひ当事務所にご相談ください。

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