遺留分侵害額請求権とは?
遺留分は兄弟姉妹や甥姪以外の相続人について保障された最低限の相続分です。そして、この遺留分を行使する権利のことを「遺留分侵害額請求権」といいます。
この遺留分侵害額請求権、以前は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていました。その後、民法の改正によって、遺留分侵害額請求権に名前を変えた経緯があります。名前を変えたということは、その中身も変化しています。「減殺請求権」から「侵害額請求権」に名前が変わっています。「侵害額請求権」という名称には、遺留分の解決はモノではなく、お金で行いましょうという趣旨が込められています。
もともと遺留分減殺の場合は、例えば不動産なら不動産で遺留分、現金なら現金で遺留分ということで、相続財産ごとに遺留分が決まっていました。しかしもともとの遺留分の趣旨が遺言によって遺留分を侵害された相続人に対する生活保障であることや、生前の遺産形成への寄与への配慮であることが趣旨であれば、遺留分は最終的に金銭で解決することが趣旨に沿うということや、金銭で遺留分を解決することで中小企業の事業承継を円滑に進めるために改正が行われました。
遺留分侵害額請求権と遺留分減殺請求権の違い
両者の違いをまとめると、以下のようになります。遺留分は、侵害された相続人が行使の意思を表示して初めて効力が発生する権利(形成権)です。そのため、以下の表では、遺留分を侵害された相続人が権利行使したことを前提の違いです。
遺留分侵害額請求権(新法) | 遺留分減殺請求権(旧法) | |
中身 | 金銭で解決 | 現物や金銭で解決 |
包括遺贈や特定遺贈で侵害がある場合 | 遺贈は無効にならない | 遺贈は無効になる |
不動産が相続財産の場合 | 不動産は取得できない | 不動産を取得できる |
行使できる期間 | 侵害を知ってから5年、相続から10年間 | 制限なし |
侵害額の計算 | 相続時の価額 | 口頭弁論終結時の価額 |
対象となる贈与 | 相続人の場合は、10年以内の贈与と死因贈与
相続人以外の場合は、相続開始前1年以内の贈与 |
相続人の場合は、生前贈与、死因贈与すべて
相続人以外の場合は、相続開始前1年以内の贈与 |
申し立てる裁判所 | 被相続人の最後の住所地 申し立てる相続人の住所地 のいずれか |
被相続人の最後の住所地 |
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている