相続人申告登記は相続登記よりも簡便な手続き

相続人申告登記は、本来行うべき相続登記の代わりに簡便的な方法で不動産にかかる法定相続人が誰かということを登記する制度です。相続人申告登記は、権利の変動を公示するわけではなく、あくまでその不動産を取得する可能性がある相続人を公示するにすぎません。

そのため、権利の移転を公示する相続登記に比べて簡易は方法で登記が行われると考えられます。相続登記が「申請」なのに対して、相続人申告登記が申請よりも簡便な「申出」によるのもそのためです。

相続人申告登記に必要な戸籍

相続人申告登記は相続人ごとに行われます。つまり申出をした相続人が、不動産に権利者として登記されている被相続人の相続人であることが示せれば戸籍としては十分といえます。

例えば配偶者や独身の子が相続人申告登記の申し出を行うのであれば、除籍された被相続人の戸籍の中に申し出をした相続人が入っていればそれで充分です。ただし、このようなケースでは、不動産の相続人がすでに決まっていることも多く、相続人申告登記の申し出を経由せずに、そのまま相続登記を申請することも考えられます。

例えば兄弟相続で相続人が各地に散らばっているように遺産分割協議に時間がかかるようなケースでは、相続人申告登記が活用されるかもしれませんが、この場合は、被相続人と兄弟である相続人のつながりを証明するのに、それなりの量の戸籍を集める必要はあるかもしれません。兄弟相続であれば被相続人に子がいないこと、両親などの直系尊属が亡くなっていることを証明する必要があるので、結局被相続人の出生からの戸籍など広範囲に集める必要が出てくるでしょう。

また、相続人申告登記は相続人ごとに申し出を行いますが、一人の相続人が各相続人の委任を受けて相続人申告登記をすることもあり得ます。むしろ、一人だけ相続人であることや住所・氏名を登記するよりも、全相続人でいったん相続人申告登記を申出するといったことのほうが自然かもしれません。