相続人申告登記の役割

相続登記の義務化の目的は、所有者不明土地の発生を防止することです。相続登記を義務化すれば、不動産登記の記録を見れば誰が所有者かということが容易に把握できるようになるということです。相続登記の申請義務は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日」から3年以内と定められています。

一方で、相続登記を義務化するといっても、いまだ遺産分割協議がまとまらない中で法定相続分でとりあえず登記させることは相続人にとっては戸籍収集などの負担も大きく、遺産分割協議による具体的な相続分とは異なる登記をすることへの抵抗もあります。

かといって、遺産分割協議がまとまるまで相続登記を行わなくてもよいということになれば、実際に資産的な価値がない不動産の相続登記については放置される可能性もあり、相続登記の申請義務も形骸化する恐れがあります。

そこで新たに導入されるのが相続人申告登記です。相続人申告登記とは、いまだ遺産分割協議がまとまっていない段階で、不動産ごとにひとまず法定相続人が誰かということを登記する制度です。相続人申告登記を行っておくことで、相続登記の申請義務を履行したものとして扱われます。そのため、遺産分割協議がまとまらない中でとりあえず法定相続分での登記をするのではなく、その代わりに相続人申告登記を活用するといったことが想定されます。

相続人申告登記を行ったからといって、その不動産がその相続人の所有となるわけではありません。あくまで相続人申告登記は、その不動産の法定相続人、つまり不動産の所有者になる可能性がある者を公示するための制度で、権利変動を公示するという従来の登記とは全く異なる役割を持つ制度です。

また、相続人申告登記を行うことで相続登記の義務を果たしたことになるのは、その申告登記を申請した相続人だけです。つまり、それぞれの相続人が相続人申告登記を申請する必要があるということです。(結局全員で相続人申告登記を申請するのであれば、相続登記の申請や国庫帰属制度の活用を検討したほうが良いかもしれません。)

相続人申告登記の中身

相続人申告登記の中身としては、申し出をした相続人の住所や氏名が登記されます。そして相続人申告登記がされた場合は相続登記の申請義務を果たしたものとしてみなされます。

相続人申告登記を利用するということは、ほかにも相続人がいることが多いでしょう。相続人一人なら相続人申告登記なんて経由せずに、そのまま相続登記を申請してしまったほうが早いからです。

相続人申告登記の申し出をした相続人以外に相続人がいても、申し出した相続人以外の相続人の住所や氏名は登記されません。個人情報を一人の相続人の意思で勝手に登記されると大変なことになります。裏を返せば、遺産分割協議がまとまらずに、ひとまず相続人申告登記を申請することで相続登記の申請義務を果たしたことにしようといった場合には、各相続人が個々に相続人申告登記を申請する必要があるということです。

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