Last Updated on 2025年6月27日 by 渋田貴正
相続分を譲渡に関する税金4つのパターン
相続財産をめぐる手続きの中で、「自分の相続分を他人に譲りたい」という場面に出会うことがあります。これを「相続分の譲渡」といいます。
この「相続分の譲渡」には、税金の面で注意すべきポイントがいくつかあります。譲渡する相手が誰か、譲渡の形式が贈与か売買かによって、課税の仕組みが大きく変わるからです。特に譲渡を受ける相手が相続人か相続人以外の第三者かで相続分の譲渡による課税関係が大きく変わってきます。
ここでは、譲渡の相手と形態を組み合わせて、次の4つのケースに分けて整理してみましょう。
パターン | 譲渡相手 | 形態 | 税金の種類 |
パターン① | 他の法定相続人 | 贈与 | 相続税(受贈者課税) |
パターン② | 他の法定相続人 | 売買 | 相続税(譲受者)+譲渡所得課税の可能性 |
パターン③ | 第三者 | 贈与 | 相続税(譲渡人)+贈与税(第三者) |
パターン④ | 第三者 | 売買 | 相続税(譲渡人)+譲渡所得税(所得税・住民税) |
相続人間での譲渡(パターン①・②)
相続人同士の間での譲渡は、実質的に「遺産分割の延長または一部の切り出し」と考えられています。
パターン①:相続人同士の「贈与」
相続分の全部または一部を他の相続人に無償で譲る場合、税務上は贈与ではなく相続税の対象とされるのが通常です。したがって、贈与税の課税はされず、あくまで相続人として取得した人が相続税申告に含めて計上することになります。
パターン②:相続人同士の「売買」
相続人が相続分を金銭で他の相続人に譲渡する場合、「代償分割」と同様の扱いになります。
- 譲渡を受けた側(購入側):取得財産に応じた相続税の計算対象となります。
- 譲渡した側(売却側):売買代金の受取に対し、譲渡所得税の対象となる場合があります。
※不動産など特定の資産を含む場合には、特に「取得費加算の特例」などの検討も必要です。
第三者への譲渡(パターン③・④)
相続人が、自身の相続分を相続人でない第三者に譲渡する場合には、いったん相続が成立したあとで財産を譲渡したとみなされます。
パターン③:第三者への「贈与」
この場合、2段階の課税が起こります。
第三者が親族や知人である場合、つい「贈与税がかからないのでは」と思いがちですが、厳密には無償譲渡=贈与とみなされ、原則どおり課税されます。
パターン④:第三者との「売買」
この場合の流れは以下のようになります。
- 相続人が相続により財産を取得し、相続税の対象になる。
- 取得した財産を第三者に売却する。
- 売却益に対して、**譲渡所得税(所得税+住民税)**が課税される。
なお、このとき売却価格が著しく低い場合は、税務署から「時価との差額は贈与とみなされる」と判断されるリスクがあります。
「相続分の譲渡」は、相続税・贈与税・所得税が絡む非常に複雑な論点です。
判別ポイント | 税務影響 |
相手が相続人か第三者か? | 相続税 or 贈与税の分かれ目 |
譲渡が贈与か売買か? | 贈与税・所得税の課税有無が決まる |
売買価格が時価に比して著しく低いか? | みなし贈与の可能性 |
実際には、贈与税の基礎控除の活用や、相続時精算課税制度(※60歳以上の親→18歳以上の子)などを利用できるケースもあります。
また、不動産が絡む場合には譲渡所得や登録免許税・不動産取得税など、税務だけでなく登記の論点も出てきます。
税務と登記、両面からご相談いただけます
相続分の譲渡は、税金面だけでなく登記手続きにも大きな影響を及ぼします。
私は税理士であり司法書士でもあるため、税務と法務の両面からワンストップで対応可能です。
「譲渡してよいのか」「登記はどうなるのか」など、不安なことがありましたら、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。