Last Updated on 2025年6月15日 by 渋田貴正

所有権移転登記とは?

不動産の所有者が変わるときには、法務局で「所有権移転登記」を行う必要があります。この登記には、なぜ所有者が変わったのかという「原因」を記載する必要があります。ただし、ここでいう「原因」は、あくまで所有権が移転した法律上の根拠・事由であり、登記簿にそのまま記載される申請書の文言とは異なる場合があります。たとえば「相続」に関する登記でも、実際の原因は「遺贈」や「死因贈与」であることもあります。

所有権移転登記の主な原因一覧

以下の表では、不動産の所有権が移転する際の原因となる事項を分類し、それぞれの具体的な場面例、関係しそうな税金、登録免許税等の取扱い、関連法令を簡潔にまとめています。

原因の種類 内容・説明(具体例付き) 関係する税金(主に相続税・贈与税・所得税) 登録免許税等の取扱い 登記の根拠・備考
売買 売主Bが自宅を買主Aに2,000万円で売却。 所得税(譲渡所得)、不動産取得税 評価額×2.0% 民法555条
贈与 父Bが生前に息子Aに自宅を無償で贈与。相続時精算課税制度も選択可。 贈与税 評価額×2.0% 民法549条
相続 被相続人Bが死亡し、相続人Aが遺産分割により土地を単独取得。 相続税 評価額×0.4% 民法896条
遺贈 Bの遺言により、相続人でないCが別荘を取得。特定遺贈で登記。 相続税 包括0.4%、特定2.0% 民法964条以下
死因贈与 Bが「自分が亡くなったらこの土地をCに譲る」と契約。Cが登記。 相続税 評価額×2.0% 民法554条
交換 AとBが所有地を等価交換。 所得税(譲渡)、不動産取得税 各2.0% 民法586条
代物弁済 AがBへの借金返済として不動産を譲渡。 所得税(譲渡)、不動産取得税 評価額×2.0% 民法482条
時効取得 Aが20年間B名義の土地を占有し、取得。 所得税(稀)、不動産取得税(状況により) 評価額×2.0% 民法162条
共有物分割 相続で共有になった土地を、Aが単独取得する協議成立。 (相続税、贈与税いずれかの判断要) 原則0.4%、場合により2.0% 民法256条
離婚による財産分与 離婚により、夫Aから妻Bへマンションが分与される。 原則非課税 評価額×0.4% 民法768条
判決 Cが裁判で勝訴し、不動産の移転を命じられる。 判決内容に応じて変動 評価額×2.0% 不登法60条
仮登記の本登記 Aが仮登記後に本登記要件を満たしたため登記。 原因に準じた課税 原因に準ずる 不動産登記法
信託終了 Bが設定した信託が満了し、不動産が長男Aへ。 相続税または非課税 評価額×0.4% 信託法91条
放棄(共有持分) 相続で共有になった土地を、BがAに持分放棄。 贈与税 評価額×2.0% 民法255条
国庫帰属 相続人不存在で、Bの財産が国庫に帰属。 非課税 評価額×0.4% 民法959条
真正な登記名義の回復 相続人Cに誤登記された不動産を、本来のAに戻す。 贈与税または非課税 評価額×2.0% 登記実務・裁判例
原因ごとに異なる「税金」と「必要書類」に注意

所有権移転の原因によって、必要な書類やかかる税金が大きく異なります。たとえば、売買では「売買契約書」、相続では「戸籍類や遺産分割協議書」、贈与では「贈与契約書」が必要になります。また、贈与か売買かの判断を誤ると、意図せず贈与税が課税されることもありますので注意が必要です。

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