Last Updated on 2025年8月5日 by 渋田貴正

日本国内にいないまま不動産を売却・購入する場合、「本当に代金が支払われるのか?」「ちゃんと登記がされるのか?」といった不安を抱くのは当然です。とくに時差・言語の壁がある海外在住者にとっては、売主・買主いずれの立場でも安全な資金のやりとりと確実な登記手続きが求められます。

こうした状況で役立つのが「エスクロー」という仕組みです。日本ではまだ一般的とは言えませんが、海外では不動産取引の安全性確保のために広く導入されている制度です。

エスクローとは?海外で主流の安心取引スキーム

「エスクロー(escrow)」とは、売主と買主の間に第三者(エスクロー業者)を介して、条件が整うまで資金や書類を一時的に預けておく取引形態です。

たとえば、買主が代金を払ったのに売主が登記に応じないといったトラブルを避けるため、代金は一旦エスクロー口座に預けられ、売主が登記を完了させた段階で資金が支払われます。両者にとって安心な決済方法となるわけです。

日本におけるエスクローの扱いと司法書士の関与

日本では、エスクロー業務に関して明確な法律は整備されておらず、民法第521条(契約自由の原則)に基づく契約として私的に行われています。業務として反復・継続的にエスクローを行うには、資金移動業などの登録が必要です。

そのため、実際の不動産取引では、司法書士が登記実務と決済の場に立ち会い、安全性を担保する仕組みが定着しています。

項目 エスクロー 日本の司法書士による立会い
法的根拠 民法第521条など(契約自由の原則) 不動産登記法、司法書士法
中立者の役割 条件成就まで資金・書類を一時管理 登記・決済の安全な同時実行を立ち会いで担保
実務上の提供者 銀行・信託会社・弁護士法人等 司法書士が登記と決済の場でサポート
対象取引 不動産・M&A・賃貸契約・IT取引など 主に不動産売買・相続・贈与の登記付き取引

司法書士は信託業者ではありませんので、恒常的に資金を預かるようなエスクロー業者そのものにはなれませんが、不動産登記や本人確認、決済の立会いなどを通じて、実務的にはエスクローに非常に近い役割を果たすことができます。

相続や売却で司法書士の預り金口座を利用することも

実際、海外在住の方が相続した日本の不動産を売却する場面などでは、売却代金を一度、司法書士の預り金口座に集めてから相続人へ分配するケースもあります。

これはエスクローに似ていますが、以下のような違いがあります。

比較項目 エスクロー 司法書士による預り金管理
法的性質 条件付き預託契約 委任契約に基づく一時的預かり
利用目的 双方の取引リスク回避 登記・遺産分割・相続税計算等の支援
提供者 登録のあるエスクロー業者 遺産整理受任者としての司法書士
資金の預かり制限 金融規制あり 業法上の範囲内で一時的対応が可能

したがって、司法書士が関与する場合も、あくまで登記や相続業務に必要な一時預かりであり、業として広く資金移動を担うことはできません。

海外在住でもスムーズに!司法書士ができるサポートとは

海外在住の方が日本の不動産を売却・取得する際に、司法書士は以下のような支援を行うことが可能です。

  • 遠隔地からの意思確認(オンライン対応可)
  • 登記識別情報や委任状の作成サポート
  • 決済における本人確認・金融機関との連携
  • 売却代金の分配調整(預り金の範囲内で)
  • 税理士業務として譲渡所得や相続税の申告支援

とくに海外在住の場合、時差や言語・郵送の問題で取引が複雑になりがちですが、司法書士と税理士が一体となってサポートできる事務所であれば、一括して安全・スムーズに対応することが可能です。

海外在住で日本の不動産売却や相続にお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。登記・税務の両面から、安心・確実な取引を全力でサポートいたします。