海外で作成された遺言は日本で検認できる
最近では日本に不動産などを保有しながら海外居住している方からの遺言作成などの相談も増えてきました。中には日本国籍ではない人(例えば投資目的で日本の不動産を購入された方や、日本に住んでいたけど海外に引っ越すことになった外国籍の方)からの相談も増えました。
そこで、日本に不動産を保有している外国籍の人が海外で作成する遺言は日本でも使用できるのかということについてまとめました。
遺言については、まずはその人の本国で遺言という制度があるかどうかということを確認する必要があります。
法の適用に関する通則法
第37条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
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このように、まずは遺言をする人の本国法、つまり国籍がある国で遺言という制度がないと、そもそも遺言ということが成立しないということです。ただ、多くの国では遺言という法制度が整っていますので、この点についてはあまり気にすることがないかもしれません。)
次に、遺言が法制度として存在している場合に、その遺言で日本の不動産(または動産)を指定できるのかという点です。この点については、以下のように定められています。
遺言の方式の準拠法に関する法律
第2条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。 |
「行為地法」とは、とある法律行為をする地の法律のことです。例えば、アメリカ国籍の人が日本の不動産の相続については日本人の配偶者に相続させたいという遺言を作成する場合で、その作成地がアメリカであればアメリカの法律に従って作成された遺言は日本でも有効であるということです。日本であれば自筆証書遺言や公正証書遺言という方式が定められていますが、欧米のように押印文化がない国では印の代わりに署名(サイン)が使われます。しかしそうした場合でもその国でその方式が遺言の作成方法として認められていれば日本でも有効ということになります。
遺言の有効性を証明するのは相続人本人
上記の通り、外国で作成された遺言が日本でも有効とするには、以下の2点を満たしておく必要があります。
1)遺言という法制度が本国で整備されていること
2)遺言の方式が、遺言作成した国の法律に則っていること
これだけを満たしていれば、日本でもその遺言を使って相続手続きが可能です。ただし、その遺言の形式が上記を満たして有効かどうかについては、日本の家庭裁判所での検認が必要となります。そして、2つの点を満たしているかどうかについては、相続人や受遺者が証明する必要があります。
この点は、例えば本国法で遺言という制度や遺言の方式についての該当箇所(日本でいうところの民法の遺言の条文)を和訳付きで提出したり、相続人の範囲について証明するための書類(諸外国では戸籍という制度がないため宣誓供述書などで代用します。)を提出したりと、日本国内での自筆証書遺言の検認とは異なる書類が必要となります。
この点については、国際相続に対応できる司法書士事務所などに依頼したほうが確実に手続きを進められるためおすすめです。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている