法律の条文を読んでいると、無効、取消し、撤回、解除といった言葉が頻繁に出てきます。法律の条文で使い分けられているので、意味にも明確な違いがあります。

用語の違いを簡単にまとめてみました。専門家でもない限り意識する必要もないかもしれない使い分けですので誰得な感じがありますが、参考までにご覧ください。

内容 遡及効 具体例(相続の規定を中心に)
無効 法律行為が初めからなかったことになること
誰かが主張しなくても当然に効力がなくなり、どちらかが認めても有効になることはないすでに履行済みの部分については双方原状に戻す必要がある
あり 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

取消し 無効と異なり当然に効力がなくなることはなく、取消しの意思表示をすることで、さかのぼって効力を失わせること

遡って効力がなくなるので、履行済みの部分を原状に戻す必要があるのは無効と同じ

あり 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

撤回 意思表示を将来に向けて消滅させること。

無効や取消しと異なり、過去にさかのぼって効力を失わせるといったことがないため、すでに履行済みの部分は有効なままである

なし 相続の承認及び放棄は、熟慮期間内でも、撤回することができない。

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

解除 契約の当事者の意思表示によって、契約の効力をさかのぼって消滅させること あり 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

よく、「発言を撤回します。」といった言い回しが使われますが、一度言った言葉は消すことができませんし、これから将来に向かって発言のような考えを捨てます、という意思表示であれば、あながち「撤回」という言い回しは間違っていないということになります。