Last Updated on 2023年5月8日 by 渋田貴正
教育のための実費負担は贈与に該当しない
教育資金の一括贈与については1,500万円まで非課税になる制度があります。しかし、そもそも教育を受けされることは扶養に関係することであり、そもそも教育に関するコストを祖父母や父母が負担することは贈与に該当しないのではという疑問が湧きます。
相続税法では、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は贈与税の課税対象にしない旨が規定されています。扶養義務者とは、相続税の中では民法での「直系血族及び兄弟姉妹」のほかに配偶者や三親等内の親族も含まれます。「教育費」とは相続税法上「今日苦情通常必要と認められる学費、教材費、文具など」を指していて、義務教育に限らず大学や専門学校に行くための費用も教育費に含まれて贈与税の課税対象から外れます。
つまり、祖父母や父母が子や孫の教育費を負担することは扶養の範囲内の話であって、本来は贈与税が絡んでくる話ではありません。
まとまった一定額をあらかじめ渡したい場合に教育資金の一括贈与を活用
しかし、教育費の負担が贈与とならないのは教育に関する実費を必要な都度負担している場合に適用されます。生活費でも必要な金額を超えた分については贈与税の課税対象になるのと同じように、教育費も必要な実費を負担した場合に贈与税の対象とならないことになります。例えば、大学の授業料が100万円で、その支払いの都度必要額を渡すか、直接祖父や父母が大学に振り込むといったケースでは贈与にはなりません。直接負担していることが分かるようにするには、負担する人が直接教育機関などに支払うのがよいでしょう。
一方で、特に高齢の祖父母やそれより上の代の場合は、いつ相続が起きてもおかしくなく、教育のためにある程度まとまったお金を贈与しておきたいというニーズも存在します。しかし通常であれば、実費とは関係なくまとまった金額を渡すことは、いくら教育のためという動機があっても贈与税の課税対象になってしまいます。そこで教育資金の一括贈与の制度を使うことで贈与税を非課税にする特例が設けられています。教育資金の一括贈与であれば金融機関の管理の元で贈与資金を教育の費用に充てていくため、贈与したお金が教育の実費として使われていくことが将来的に保証されているため非課税となっています。
まとめると、
・必要な都度、教育の実費を祖父母などが負担することは贈与税は非課税
・教育のために一定の金額をまとめて渡しておきたい場合には教育資金の一括贈与の制度を活用する
ということになります。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。