不在者財産管理人とは

そもそも不在者とは民法で以下のように定義されています。

民法 第25条
  1. 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

従来の住所又は居所を去った者=不在者ということで定義されています。もうすこしかみ砕くと、不在者とは住所や居所からいなくなって連絡が取れなくなっている人をいいます。連絡は取っていなくても、どこに住んでいるかなど把握できていれば、その人は民法で定義される不在者ではありません。そして、この連絡が取れなくなっている不在者の財産を管理するために選任されるのが不在者財産管理人です。

不在者財産管理人と失踪宣告の関係

不在者財産管理人は、相続の時だけに選任されるわけではありません。しかし、現実には不在者財産管理人といえば行方知れずの人が相続人にいる場合などに、その相続人に代わって遺産分割協議に参加してもらうといった形で不在者財産管理人を選任することが多いです。何かモノを残して行方不明になったからといって、その人が残置していったものを管理してもらうために、わざわざ手間をかけて不在者財産管理人の選任手続きを行うことは、空き家のように管理について手間がかかるようなケース以外は考えられません。相続手続きのように不在者財産管理人がいないと手続きが進まないといったケースでは実際に利害が発生するために選任手続きが行われることがあります。

しかし、もし失踪宣告の要件を満たしているのであれば、不在者財産管理人の選任を経ずに失踪宣告の申立てが行われるといったことも往々にしてあります。不在者が行方不明になってから7年間経過していれば失踪宣告の申立が可能です。しかし、もし失踪宣告の対象となった不在者が生存していたら、失踪宣告の取消しが必要となります。失踪宣告の取消しがあると、遺産分割協議のやり直しなどで非常に手間やコストがかかります。

あえて失踪宣告ではなく不在者財産管理人を選択する理由としては以下のようなものが考えられます。
1)失踪してから7年間経過しておらず失踪宣告の申立ができない場合
2)万が一生存していた場合に失踪宣告の取消しの手間を避けたい場合(少しでも生きている可能性がある場合)

不在者財産管理人の職務が終了するとき

不在者財産管理人は以下の事由に該当した場合に職務が終了します。申し立てた利害関係人などが任意に職務を終了させられるわけではありません。
1)不在者が現れたとき
2)不在者に失踪宣告がされたとき
3)不在者が死亡していることが分かったとき
4)不在者の財産がなくなったとき

いったん不在者財産管理人が選任されると、上記の事由に該当しない限りはその職務が続きますので、不在者財産管理人の選任申立てについても、失踪宣告と同様に慎重に検討する必要があります。