相続登記の義務化は相続人への遺贈にのみ適用される

相続登記の義務化については、「相続」を原因とした登記に対して適用されます。それでは、同じように相続があった場合に発生する「遺贈」についても義務となるのでしょうか?

相続が発生した場合には、各相続人は、自己のために相続があったことを知って、かつ相続対象となる不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負います。また、この期間内に相続人申告登記の申し出を行うことによっても、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。これが相続登記の申請義務の基本です。

遺言は、その内容によって「遺贈」と「特定財産承継遺言」の2つのパターンがあります。このうち、特定財産承継遺言は法定相続人に対して行われますが、遺贈は法定相続人以外の第三者に対して行われることもあります。

特定財産承継遺言は、そもそも法定相続人に対して行われるものなので、相続登記の申請義務化の対象となることは納得です。一方で、遺贈については、相続人に対して行われた遺贈のみが相続登記の申請義務化の対象となります。相続人に対する遺贈は相続と同視できますが、相続人以外の第三者に対する遺贈においては、相続が原因とは言え、被相続人と受遺者の間には贈与や売買に近い性質があるといえます。

そのため、相続登記の申請義務化の対象となるのは、遺贈のうち相続人に対して行われた遺贈のみとなります。相続人以外の第三者に対して行われた遺贈については、遺贈による所有権移転登記の申請義務は課されていません。