死亡届受理後は印鑑証明書は取得できない

死亡した人の印鑑証明書は取得できるのかということの答えは、はっきりと「No」です。厳密にいえば、死亡届が市区町村に受理されて住民票が抹消される(除票になる)タイミングで印鑑証明書の登録も抹消されることになります。そのため、死亡届の受理後は、その人の印鑑証明書は取得できなくなります。

印鑑証明書は、登録した人が書面に実印を押印してその印影が、市区町村に登録されている実印の印影と合致するかを確認するための書類です。つまり死亡して意思表示ができない人の印鑑証明書を使うことは制度趣旨に反するということになります。

死亡する前に取得した印鑑証明書を死亡後に使用することは問題ない

上記のように、死亡届が受理されるまでは死亡した者の印鑑証明書の発行は現実的には可能です。しかし、戸籍で死亡日が記載されますので、その死亡日後に発行された印鑑証明書については無効な書類です。いまでは、マイナンバーカードがあればコンビニでも簡単に印鑑証明書が取得できる時代になりました。しかし、万が一にも死亡した人の印鑑証明書を取得するといったことはないようにしましょう。

相続の現場で印鑑証明書といえば、遺産分割協議書に押印した実印の正当性を証明するために使用します。もし死亡した人の実印を管理していたとしたら、死亡した人の印鑑証明書を取得して遺産分割協議書を偽造するといったことも可能になってしまいます。相続の現場では、遺言でもない限り遺産分割協議書の内容が最重要ですが、その遺産分割協議書は各相続人の意思に基づいて作成されている必要があります。一部の相続人が別の相続人の実印を押印するということはあってはならないということです。

ただ、死亡する前にご本人が印鑑証明書を取得して遺産分割協議書に実印を押印していたという場合には、本人の死亡後であってもそのまま相続登記や金融機関の手続きに使用しても問題ありません。本人が死亡していたとしても、意思表示自体は生前に行われていたためです。死亡した人が生前に取得していた印鑑証明書が死亡によって無効になるというわけではありません。(印鑑証明書の有効期限という問題は別にありますが。)