負担付遺贈とは?

そもそも遺贈とは、プラスの財産を引き継がせるものなので、借金などマイナスの財産を引き継がせることは遺贈にあたりません。しかし、財産の遺贈とセットで一定の負担を遺贈を受ける者(受遺者)に課すことは可能です。これを「負担付遺贈」といいます。

例えば、「Aに不動産を遺贈する代わりに、母であるBを引き続き看護しなければならない。」といった内容です。負担だけを一方的に化することはできないので、必ず遺贈とセットになります。こうした負担付遺贈のほかに、遺贈に条件を設ける条件付遺贈や、遺贈に期限を設ける期限付遺贈がありますが、負担付遺贈は遺贈とセットで法的義務の履行を課すということで、他の遺贈の形態と異なります。

また、法律上強制できない内容や、不確定な内容とセットになっている遺贈は、負担付遺贈ではなく、条件付遺贈ととらえられます。例えば、以下のようなものは条件付遺贈です。
「Aに不動産を遺贈する代わりに、Aは婚姻してはならない。」は「Aが婚姻しないことを条件に、Aに不動産を遺贈する。」に読み替えられます。看護や養育などの法律的な義務は条件ではなく遺贈とセットなので、負担を負いたくなければ遺贈を積極的に放棄するということになりますが、条件付遺贈であれば、条件を満たさなければ遺贈も有効にならないという違いがあります。

もし受遺者が遺贈を放棄した場合には、負担の相手方になっていた者(上記の例ではB)が不動産の受遺者になることができます。(遺言で別の定めがある場合を除く)

負担を履行しない場合はどうなる?

負担付遺贈を受けて、財産を引き継いだ後に負担を履行しない場合はどうなるのでしょうか?特に養育や看護など、被相続人が亡くなった後にも負担の履行に一定期間要するものもあります。負担付遺贈は、負担の履行を条件に遺贈が発生するわけではなく、遺贈の財産を取得して、あとは財産の範囲で負担した義務を履行するということになります。つまり、負担の履行の有無にかかわらず、いったん遺贈は有効になるということです。

ただし、負担付遺贈で、負担が履行されない場合は、他の相続人が納得しないでしょう。そのため、負担を履行しない受遺者に対して、他の相続人や遺言執行者は履行を催告して、それでも履行されなければ家庭裁判所に遺贈の取り消しを請求できます。負担付遺贈が取り消された場合には、受遺者にとって負担の履行義務とともに遺贈も遡及的に失効しますので、遺贈の目的物は相続人に帰属します。

負担付遺贈がある遺言についてのご相談はぜひ当事務所までお問い合わせください。

民法 第1002条
  1. 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
  2. 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第1027条
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。