Last Updated on 2025年11月6日 by 渋田貴正
日本国内で外国籍の方が亡くなった場合、日本の自治体だけではなく本国への死亡届が必要にある場合があります。また相続税の申告、不動産登記など、いくつかの異なる機関への手続きが必要です。
日本人と異なり、戸籍や本国の制度の関係で、国内だけでは完結しないケースも多く見られます。
日本で亡くなった外国籍の方の死亡届の提出先と大使館・総領事館への届出
日本の市区町村への死亡届
外国籍の方でも、日本国内で亡くなられた場合は、まず死亡地または居住地の市区町村役場に死亡届を提出します。
届出人は、同居の親族、同居していない親族、同居者、家主など、通常の日本人と同じ順序です。
死亡届には医師が作成した「死亡診断書」を添付します。
在日大使館・総領事館への届出
外国籍の方の場合、国によっては本国側の大使館や総領事館への届出が義務づけられていることがあります。
たとえばアメリカ国籍の方であれば、在日米国大使館または総領事館に死亡の届出を行うことができます。
届出により、アメリカ政府が発行する「国外死亡報告書(Consular Report of Death Abroad)」が作成され、本国での相続・保険金請求・年金停止などに使用されます。
また、フィリピン、韓国、中国など他国でも、自国民が日本で亡くなった場合には、在日大使館・領事館への届出が求められる国があります。
この届出を行わないと、後日、本国での相続や各種届出の際に「死亡の事実を証明できない」ため、手続きが進まないことがあります。
死亡届と大使館届出の流れ
- 日本の市区町村役場に死亡届を提出。
- 「死亡届記載事項証明書」や「埋火葬許可証」を取得。
- 必要に応じて、これらの証明書を翻訳して本国大使館・領事館に届出。
- 大使館から本国政府機関へ報告され、本国側での死亡登録が行われる。
このように、「日本の役所への届出」と「本国への届出」は別ルートであり、両方を行うことで後の手続きが円滑になります。
行政・社会保険関係の手続き
埋葬料・葬祭費の請求
亡くなられた方が日本の健康保険(社会保険・国民健康保険)に加入していた場合、
- 健康保険加入者:埋葬料(5万円)
- 国民健康保険加入者:葬祭費(自治体によって3〜7万円前後)
を請求できます。
請求できるのは、葬儀を行った人(喪主など)で、死亡日の翌日から2年以内です。国籍に関係なく支給対象になります。
年金関係の手続き
被相続人が日本の年金(老齢年金など)を受給していた場合は、年金の受給停止届出が必要です。
日本年金機構への届出のほか、外国籍の方で年金協定(社会保障協定)締結国の方は、本国の年金機関への届出も必要になることがあります。
また、未支給年金がある場合、相続人が請求できる制度もあります。
在留資格・保険・銀行口座など
外国籍の方が亡くなった場合、その方の在留カードやマイナンバーカードの返納も必要です。
さらに、銀行口座・不動産・車両などの名義が残っている場合は、相続手続により名義変更を行います。
外国籍の被相続人が亡くなったときの相続税の課税関係
外国籍や海外在住者が関係する相続では、「どの財産に日本の相続税がかかるのか」が問題になります。
| 被相続人・相続人の状況 | 日本で課税される財産 |
| 被相続人が日本に住所あり | 国内・国外すべての財産 |
| 被相続人が国外に住所あり、相続人が日本居住 | 国内財産のみ課税される場合あり |
| 被相続人・相続人とも非居住 | 原則として日本国内の財産のみ |
実際には国籍や居住年数などに応じて所在国による課税資産の範囲が異なってきますが、ざっくりまとめると上記のようになります。
被相続人が日本に長期間居住していた場合は、海外財産も含めて相続税がかかるケースがあります。
一方で、短期滞在や一時的な在留であれば、国内財産だけが対象となることもあります。
相続税の申告期限は、亡くなった日の翌日から10か月以内です。外国籍・海外居住者が関係する場合、書類収集に時間を要するため、早めの準備が重要です。
外国籍の被相続人が亡くなったときの不動産登記・名義変更の手続き
外国籍の被相続人が日本に不動産を持っていた場合、不動産の相続登記(名義変更)が必要です。
このとき、日本人のように戸籍謄本がないため、代わりに本国政府発行の出生証明書・婚姻証明書・宣誓供述書などで親族関係を証明します。
また、相続人が海外居住者で印鑑証明書を取得できない場合は、署名証明書(サイン証明書)を在外公館(外国籍の場合は現地の公証人)で取得して提出します。
例:韓国籍の方が東京都で亡くなり、相続人が日本在住の子と韓国在住の妻である場合
- 市区町村役場へ死亡届を提出し、埋火葬許可証を取得。
- 韓国大使館にも届出し、本国で死亡登録を実施。
- 相続人関係を証明するため、韓国側で家族関係証明書を取得。
- 日本の不動産登記を行う際、海外在住の妻のサイン証明書を添付。
- 相続税の申告を日本で行い、国外財産の課税対象を確認。
このように、複数の国の制度が関係するため、専門家のサポートが不可欠です。
外国籍の方の相続は、死亡届ひとつを取っても日本と本国の両方への届出が関係し、税務や登記の要件も国籍・住所によって異なります。
私は、税理士・司法書士の両資格を持つ立場から、
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日本の死亡届・大使館届出のサポート
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相続税の課税判定と申告
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不動産の相続登記代行
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書類翻訳・署名証明対応
を一貫して行っています。
「外国籍の家族が日本で亡くなったが、何から始めればよいかわからない」という場合でも、最初の届出から税務・登記まで安心してお任せください。
国際相続の経験豊富な専門家として、確実で円滑な手続きをサポートいたします。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
