Last Updated on 2025年6月24日 by 渋田貴正

海外在住でも日本の不動産を購入できる時代へ

海外に住みながら日本の不動産を所有し、賃貸経営や資産形成を行いたいとお考えの方が増えています。特に、法人を設立して不動産を購入・管理する形をとれば、税務上のメリットや相続対策にもつながるため、有効な選択肢となります。

この記事では、海外在住の方が日本で不動産管理会社を設立し、その会社名義で不動産を購入するまでのステップを解説します。

基本の流れは「法人設立→口座開設→融資→不動産購入」

海外在住の方が日本で不動産を購入する場合、個人名義での取得と日本国内に法人(株式会社または合同会社)を設立し、その法人名義で不動産を取得するという方法があります。どちらのパターンでも可能性はありますが、状況によっては日本国内に資産管理会社を設立して取得する方がよいケースもあります。この方法をとることで、銀行口座の開設や融資の審査にも対応しやすくなります。ただし、外国会社の登記を日本で行うパターンでは、所有者が外国法人となってしまうため、対象にならないケースがほとんどです。

全体の流れは次のとおりです。

ステップ 内容
① 法人設立 日本に不動産管理会社を設立
② 銀行口座開設 設立した法人名義で口座開設
③ 融資申請 法人として不動産取得の融資を申請
④ 不動産購入 融資実行後、法人名義で購入・登記

ステップ1:不動産管理会社の設立

不動産の取得や賃貸管理を目的とする法人は、「不動産管理会社」と呼ばれ、株式会社または合同会社として設立されるのが一般的です。登記にあたっては、以下の条件がポイントとなります。

  • 本店所在地は日本国内である必要があります
  • 海外在住者でも代表取締役や業務執行社員になることは可能です
  • 定款の作成と登記申請は、司法書士を通じてリモートで対応可能です

なお、国内で法人を設立する以上、税務署への法人設立届出書や、給与支払いがある場合は給与支払事務所等の開設届出書の提出も必要となります。

ステップ2:銀行口座の開設

法人を設立しても、実際に資金を受け取ったり支払いを行ったりするには、日本国内の金融機関に法人名義の口座を開設することが不可欠です。

ここで最も大きなハードルとなるのが、代表者が海外在住である場合の口座開設です。多くの銀行では、マネーロンダリング防止や取引の実態確認の観点から、「代表者が日本居住者であること」を実質的な要件とするケースが少なくありません。

そこで、以下のいずれかの方法で対応することが一般的です。

1.日本に住む共同代表を設ける

合同会社や株式会社では、複数人による共同代表制をとることができます。たとえば、日本に住んでいる親族や信頼できるパートナーを「代表取締役(または代表社員)」として追加することで、日本国内での対面審査や本人確認にも対応しやすくなります。

2.代表者自身が日本に滞在して対応する

口座開設時に代表者本人が来店して手続きすることを求められる銀行も多いため、一時的に日本に滞在して住民票を取得し、居住者として対応する方法も有効です。これにより、銀行が求める本人確認の要件を満たしやすくなります。

3.非居住者に対応した金融サービスの活用

近年では、海外在住者向けの法人融資や口座開設に対応した専門サービスやネット銀行も登場しています。すべての銀行が非居住者を一律に拒否しているわけではなく、一定の資産要件や法人の実態が確認できることを前提に、口座開設や融資を認めている例もあります。(※ただし、こうした金融サービスは条件が限定されていることが多く、詳細は個別に確認が必要です。)

ステップ3:融資の申し込み

銀行口座の開設が完了すれば、次は融資の申し込みです。日本国内での不動産購入にあたっては、以下のような法人向け不動産ローンが存在しています。

  • 不動産取得資金のための融資(アパート、マンション、一棟ビルなど)
  • すでに所有する物件を担保にするローン
  • 海外居住者でも利用可能な法人向けスキーム(資産要件などの条件あり)

これらの融資には以下のような審査項目があります。

審査項目 内容
法人の資産内容 自己資金の有無、会社の財務基盤
代表者の属性 年収、資産、過去の信用情報など
不動産の担保評価 収益性や立地、評価額など
事業計画 賃貸収入や管理体制の見通しなど

特に、設立初年度の法人では実績がないため、物件の担保力と代表者の信用力が重視される傾向にあります。

ステップ4:不動産の購入と登記

融資が承認され、資金が実行されたら、いよいよ不動産の購入契約・引渡し・登記へと進みます。法人名義での不動産取得では、次のような手続きが必要です。

  • 売買契約の締結(法人名義)
  • 所有権移転登記の申請(不動産登記法第3条等)
  • 登録免許税・不動産取得税の納付
  • 消費税の取扱い(建物部分が課税対象)

この段階では、司法書士が登記申請を代理し、税理士が取得時の経費処理や税務判断を行うことが多いため、専門家の連携体制が重要です。

不動産取得を成功させるためのポイント
ポイント 内容
銀行との関係構築 実体のある法人、明確な事業目的を提示
代表者の信用力 海外在住でも収入・資産を証明できる資料を用意
税務対応 所得区分、消費税、法人税などの計画を立てる
専門家の活用 登記と税務の両方をカバーするサポート体制が鍵

このように、海外に住んでいても、日本で法人を設立し、その法人を通じて不動産を購入することは可能です。ポイントは、銀行口座の開設と融資審査という2つのハードルを戦略的にクリアすることです。

当事務所では、海外在住者の方向けに、法人設立から銀行対応、融資サポート、登記申請、税務対応まで、税理士と司法書士が連携してワンストップでご支援しています。安心して日本での資産形成を進めたい方は、ぜひ一度ご相談ください。