相続登記の申請義務化については、相続により不動産の所有権を取得した相続人について、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けています。条文では以下のようになっています。

不動産登記法 76条の2

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

「相続により所有権を取得した者」となっていますので、これには外国籍の人も含まれます。

しかし、一方で「相続により所有権を取得」となっていますので、相続によってその不動産について所有権を取得する、といったことが必要です。日本であれば、相続発生と同時に相続財産は法定相続人の共有となるということになっているため、相続発生によっていったん法定相続人が相続不動産を引き継ぎ、その結果相続登記の申請義務が発生するということになっています。

しかし、国によっては相続が発生すると、直接法定相続人の共有になるのではなく、相続財団を形成してその後裁判所のもとで債務や税金の支払いが行われたあと各相続人に分配という管理清算主義の国もあります。この管理清算主義のもとでは相続して即法定相続人に所有権が移転するわけではありません。

反致はあるか要確認

また、そもそも日本の法律が適用されるのかという問題もあります。外国籍の人が亡くなった場合、まずはその人の本国(つまり国籍がある国)の法律を適用する旨が定められています。

法の適用に関する通則法
(相続)
第36条 相続は、被相続人の本国法による。
反致
第41条 当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。(中略)

そして本国法において日本の法律を適用する旨が定められていた場合には日本の法律が適用できるということになります。(反致

例えば、中国では不動産の相続については不動産の所在国の法律を適用する旨が定められています。そのため、日本国内に不動産を持つ中国籍の人が亡くなった場合、その不動産の相続関係の法律については日本の法律が適用されます。そのため、中国籍の人に相続が発生すれば相続登記の申請義務が発生するということになります。

同様に不動産について所在地法を適用する旨を定めている国としては、イギリス、シンガポール、オーストラリア、アメリカなどがあります。

このように反致が発生する場合には、日本の法律が適用されるため、前述の管理清算主義にかかわらず相続登記の申請義務が発生することになります。反致が起こらず管理清算主義を採っている国では、相続発生で即法定相続人の共有ということにはなりません。ただ、相続財産の分割が終われば、日本国内の不動産を引き継いだ相続人は裁判所の分配が確定した日から3年以内には相続登記を終わらせる必要があります。

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