不動産にしても動産にしても、他人の財産を一定期間占有することで、その取得を認められることを時効取得といいます。
時効取得の要件については、民法で以下のように定められています。
第163条 |
上記の通り、財産を時効取得するためには以下の要件が必要となります。
1)所有の意思を持っていること
2)平穏であること
3)公然であること
所有の意思とは
所有の意思とは、文字通り、とある財産を自分が所有するという意思をもって占有することです。所有の意思というのは外形的に判断されることになります。例えば、部屋を借りる契約でもともとの契約が賃貸借契約であれば、どれだけ借主が自分のものだと思って部屋を占有していても、それはどこまで行っても賃貸借契約です。所有の意思のある占有を「自主占有」、所有の意思のない占有を「他主占有」といいます。
契約上借りていることになっていても自分は所有のつもりだったというような個別的な事情を考慮すると法的な安定もあったものではありません。そのため、時効取得の根本的な考え方である「自主占有」については外形的に判断するということになっています。
自主占有開始の例 | 売買、贈与、交換 |
他主占有開始の例 | 賃貸借、地上権、質権、他社の財産管理契約、親権者が未成年者のモノを占有 |
「平穏」であることとは
「平穏」とは、強迫や暴行などの反対です。つまり法律的に許されないような行為で占有を開始、または継続したということがない状態です。
ただし、占有の開始や継続が平穏であれば、他者から占有物の明け渡しを求められたからといって「平穏」ではなくなるわけではありません。この場合、他者の言い分が正しいかどうかは司法が判断することであって、訴えられたからといって平穏ではなくなるというわけではないということです。
「公然」であることとは
公然とは隠匿、隠秘の対義語です。つまりモノを占有していることをあえて隠しているかどうということです。とはいえ、時効取得の大前提でる自主占有をしている人は自分のものだと思って占有しているため、あえて「これは自分のものだ」ということをオープンにすることも必要ありません。あえて、占有していることを隠すような行為をするといった場合に「公然」が問題になりますが、関係者が占有を知らないといったことだけで「公然」でなくなるというわけではありません。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている