越境してきた枝の切り取り

相続した土地に隣の家の木の枝が越境してきているということはしばしば起こります。この越境してきた枝をどのように切り取るかということはしっかりと把握しておく必要があります。越境してきているとはいえ、他の人の持ち物である木の枝です。いつでも勝手に切り取ってよいというわけではありません。

民法上は、以下の3つのパターンで越境した枝の切り取りを越境された土地の所有者に認めています。もともとは越境してきている枝については相手に切り取るように請求するしかなかったのですが、2023年4月からの民法の改正によって、一定の要件のもと越境された側が自らカットしてもよいということになりました。

1)相手に枝を切るように請求して相当期間(2週間程度)経っても対応してくれない場合
このパターンが一番多いかもしれません。越境してきているとはいえ、本来切り取るべきはその持ち主なので、まずは木の持ち主に切るように請求します。その上で、相手が対応しなければ、越境されている側が切ってしまってよいということになっています。

2)そもそも誰が持ち主か分からないといった場合
隣の土地が空き家などでそもそも誰も住んでいないため、請求しようにも請求できないといったケースが考えらえます。しかし、住んでいないからといって、その土地がだれの所有でもないわけではありません。

そのため、現地の状況以外にも、不動産登記簿(さすがに立木登記はないと思われますが。)から所有者を確認して郵送などで連絡を取ってみても応答がなかった(この場合は(1)のパターンに該当して2週間程度待ちます)り、相続登記がずっとされていなくてそもそも誰の所有か分からないといったケースが該当します。

3)2週間も待てないような急ぎの事情がある場合
例えば枝が折れかかっていて家を傷つけそうなときなどにも切ることが認められます。

勝手に越境してきているとはいえ、人のものである木の枝はいつでもカットしてよいというわけではないということです。

木の持ち主が越境している枝を切る場合の注意点

越境されている側とは反対に、越境している側についても見てみましょう。越境している側についても、相続の形態によっては土地が共有になっているケースがあります。その場合、土地も共有なら木も共有です。共有している木の枝を切り取るには、原則的には共有者全員の同意が必要です。しかし、例えば実家をバラバラに住んでいる兄弟が共有で相続したといったケースで、兄弟全員の同意を得てから枝を切るといったことは非常に手間がかかります。そこで、越境している枝については、特例的に各共有者がその枝を切り取ることができると定められています。