相続対策を行う上では、贈与をうまく活用することが重要です。ただし、相続対策として行った贈与について、結局多額の贈与税が課税されては意味がありません。

相続対策の贈与でもっともポピュラーで活用しやすいのが定期金の贈与です。

しかし定期金の贈与以外にも、さまざまな贈与が行われています。中には贈与に該当すると認識していないケースもあります。勘違いしやすいパターンをまとめてみました。

借りたことにしても贈与税が課税される場合

お金を借りたとしても返済が行われない、あるいは出世払い、返済期限も定めず督促もしない、といったように貸主側があげたも同然のように扱っていれば、それは贈与です。形だけの借用書を作っていたとしても贈与です。金融機関であれば同然ですが、何月何日にいくら返済するといったように返済スケジュールを作成して、その通りに返済していくはずです。返済は毎月行われるものもあれば、「5年後に元本一括返済」というような一括返済パターンもあるでしょう。いずれにしても、このように第三者からみても明確な返済計画があれば、それはお金の貸し借りです。

しかし、当事者間で形式だけ整えても、返済の意思がない、または返済の強制力がないのであれば、それは実質的な贈与として扱われます。この場合はお金を渡したときに贈与が成立したものとして贈与税が課税されます。

また返済計画が決められていたとしても、それが現実的にほぼ不可能(例えば85歳の親から30年後一括返済でお金を借りる)なケースも、実質的に贈与と認められ贈与税の課税対象となります。

もちろん親族間でも明確に返済が行われていれば贈与とは扱われません。その際に利息を設定することも必須というわけではなく、元本だけの返済でも贈与税の対象になるかどうかという意味では関係ありません。

生活費や教育費を超える仕送りに贈与税が課税される場合

生活費や教育費などのお金を親が子に渡すことは贈与税の対象にはなりません。これは民法に定められる扶養義務を果たしているにすぎません。しかし、こうした仕送りの額が生活費や教育費の額の標準的な額を超える場合は、その部分については贈与になります。仕送りの額が多く、子が使わなかった分を貯金したり、株や不動産などの財産形成のための資金にしたりしていれば、その分は贈与です。例えば下宿代や生活費を合わせて14万円程度である場合に、30万円の仕送りをして、16万円は毎月子が貯金していれば16万円×12か月=192万円の贈与が成立しているということになります。

この場合、仕送りを1年分一括送金した場合、結局生活費や教育費で使わなかった額について贈与として贈与税が課税されることがあります。

親族や第三者の送金は理由があれば贈与ではない

相続預金を、代表相続人が受け取って、その後各相続人に配分する場合は単なる遺産の分配なので贈与税はかかりません。また、借入金の返済や生活費や教育費のための仕送りも、上記のような例外を除いて贈与税はかかりません。

ただし、遺産分割や遺言の内容と異なるような送金については贈与税が課税されることがあります。
遺産分割を受けた相続人から、遺産分割を受けていない相続人に対して相続したお金を譲り渡した場合には、相続人間の相続分の譲渡として扱われますので、贈与税は課税されず相続税の枠内での税負担の移転が行われます。

しかし、相続した預金を相続人でも受遺者でもない第三者に渡した場合には、いくらお金の出どころが相続預金だったとしても、受け取った人に贈与税が課税されます。

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