外国籍の人の相続の管轄
今では日本在住の外国籍の人が日本で亡くなるといったことも珍しくなくなりました。外国籍の人が亡くなった場合も相続放棄はできるのかということですが、これは実体と手続きの両面で考える必要があります。
まず手続きの面からですが、日本の法律では以下のように定められています。
家事事件手続法
(相続に関する審判事件の管轄権)
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つまり、外国籍の人でも、日本が亡くなったときの最後の住所になっていれば日本の家庭裁判所に相続放棄の申述をすることが可能です。
本国法で手続きの規定があるか確認が必要
次に実体面です。相続に関する準拠法については、以下のように定められています。
法の適用に関する通則法
(相続)
第36条 相続は、被相続人の本国法による。
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つまり、相続放棄という手続きが被相続人の本国の法律によって定められていることが必要になってきます。いくら相続放棄の申述が日本の家庭裁判所で出来るとしても、そもそも本国で相続放棄という制度がなければ相続放棄もできないということです。
ただし、本国にて「最後に住所を有していた国の法律に従う」といった規定があれば、日本の民法が適用されて相続放棄が可能となります。(反致)
外国籍の人の相続放棄(それ以外の相続関連の手続きもそうですが)については、まずは本国法でそのような手続きが規定されているかどうかを確認する必要があります。その手続きが規定されていれば、本国法に則って日本の家庭裁判所にて手続きが可能となります。
外国籍の人の人の相続について手続き可能なもの一覧
以下は参考までに、外国籍の人について、日本の家庭裁判所にて手続き可能なものは以下の通りです。
(参考:家事事件手続法 別表)
項
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事項
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根拠条文
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推定相続人の廃除
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八十六
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推定相続人の廃除
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民法第八百九十二条及び第八百九十三条
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八十七
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推定相続人の廃除の審判の取消し
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民法第八百九十四条
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八十八
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推定相続人の廃除の審判又はその取消しの審判の確定前の遺産の管理に関する処分
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民法第八百九十五条
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相続の承認及び放棄
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八十九
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相続の承認又は放棄をすべき期間の伸長
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民法第九百十五条第一項ただし書
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九十
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相続財産の保存又は管理に関する処分
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民法第九百十八条第二項及び第三項(これらの規定を同法第九百二十六条第二項(同法第九百三十六条第三項において準用する場合を含む。)及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。)
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九十一
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限定承認又は相続の放棄の取消しの申述の受理
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民法第九百十九条第四項
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九十二
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限定承認の申述の受理
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民法第九百二十四条
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九十三
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限定承認の場合における鑑定人の選任
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民法第九百三十条第二項及び第九百三十二条ただし書
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九十四
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限定承認を受理した場合における相続財産の管理人の選任
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民法第九百三十六条第一項
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九十五
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相続の放棄の申述の受理
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民法第九百三十八条
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財産分離
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九十六
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財産分離
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民法第九百四十一条第一項及び第九百五十条第一項
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九十七
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財産分離の請求後の相続財産の管理に関する処分
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民法第九百四十三条(同法第九百五十条第二項において準用する場合を含む。)
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九十八
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財産分離の場合における鑑定人の選任
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民法第九百四十七条第三項及び第九百五十条第二項において準用する同法第九百三十条第二項及び第九百三十二条ただし書
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相続人の不存在
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九十九
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相続人の不存在の場合における相続財産の管理に関する処分
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民法第九百五十二条、第九百五十三条及び第九百五十八条
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百
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相続人の不存在の場合における鑑定人の選任
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民法第九百五十七条第二項において準用する同法第九百三十条第二項
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百一
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特別縁故者に対する相続財産の分与
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民法第九百五十八条の三第一項
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遺言
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百二
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遺言の確認
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民法第九百七十六条第四項及び第九百七十九条第三項
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百三
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遺言書の検認
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民法第千四条第一項
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百四
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遺言執行者の選任
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民法第千十条
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百五
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遺言執行者に対する報酬の付与
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民法第千十八条第一項
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百六
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遺言執行者の解任
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民法第千十九条第一項
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百七
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遺言執行者の辞任についての許可
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民法第千十九条第二項
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百八
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負担付遺贈に係る遺言の取消し
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民法第千二十七条
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百九
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遺留分を算定するための財産の価額を定める場合における鑑定人の選任
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民法第千四十三条第二項
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百十
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遺留分の放棄についての許可
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民法第千四十九条第一項
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百三十三
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破産手続における相続の放棄の承認についての申述の受理
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破産法第二百三十八条第二項(同法第二百四十三条において準用する場合を含む。)
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項 |
事項
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根拠条文
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相続
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十一
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相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
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民法第八百九十七条第二項
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遺産分割
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十二
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遺産の分割
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民法第九百七条第二項
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十三
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遺産の分割の禁止
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民法第九百七条第三項
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十四
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寄与分を定める処分
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民法第九百四条の二第二項
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特別寄与
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十五
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特別寄与に関する処分
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民法第千五十条第二項
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司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている