土地の利用状況による評価の違い
土地を相続したり贈与したりするときは、相続税や贈与税の計算にあたって土地を評価して金額換算する必要があります。土地の評価についてはさまざまな側面から行う必要がありますが、その中でも基本的なものとして、利用状況の違いによる評価があります。
利用状況による評価とは、自宅が建っているのか更地なのか、他者の家が建っているのか、アパートが建っているのか、といった土地を何のために利用しているのかという点で区分することです。
土地の利用状況による評価は、大きく以下のように分けられます。
自用地 | 土地に権利や制限などがない土地
自宅の敷地や駐車場利用地、空き地など |
土地:自己所有 建物:自己所有・自己利用 |
貸宅地 | 他人所有の家が建っている土地(借地権が設定されている土地) | 土地:自己所有 建物:他人所有・他人利用 |
貸家建付地 | アパートなどの貸家を立てている土地 | 土地:自己所有 建物:自己所有・他人利用 |
借地権 | 建物の所有を目的として借りている宅地上に存する権利 | 土地:他人所有 建物:自己所有・自己利用 |
貸家建付借地権 | 借地権者が、自分の家の代わりにアパートなどの貸家を借地上に立てている場合に、宅地上に存する権利 | 土地:他人所有 建物:他人所有・第三者利用 |
土地の利用状況による評価方法
上記の利用状況の中で、無制限なのは自用地です。そのため、自用地の評価をベースにそれぞれの利用状況ごとに評価額を調整します。
自用地 | 路線価方式(路線価がなければ倍率方式) |
貸宅地 | 自用地評価額×(1-借地権割合) |
貸家建付地 | 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
借地権 | 自用地評価額×借地権割合 |
貸家建付借地権 | 自用地評価額×借地権割合×(1-借家権割合×賃貸割合) |
借地権割合とは、その所在地区ごとに、30%~90%の範囲で国税庁によって決められていて、路線価図に表示されています。借家権割合は全国一律30%と定められています。
賃貸割合とは、アパートなどをどの程度賃貸用にしているかということです。例えば10室あって1室は自分が住んでいるという場合には、賃貸割合は90%ということになります。
借地権が設定されていたり、他者が住んでいるアパートが建っていたりすれば、それだけ自由に使うことができませんし、立退料などの問題が発生する可能性もあります。また、借地権も法律で保護されている権利の一つですので、相続税の計算の際にも反映させる必要があります。こうした事情を一律の数式で反映させるために、上記のような数式を用いて土地の評価額を調整しています。
自己保有の土地であれば、自用地>貸家建付地>貸宅地の順に評価が上がります。貸宅地は借地権が設定されている土地です。借地権は借地借家法で保護された強力な権利で、土地の所有者といっても地代を受け取れるくらいで自由な利用ができない土地です。そのため、大きく評価が減少ことになります。
一方で、借地権者の借地権の評価は貸宅地と対になります。借地権割合が70%であれば、貸宅地(土地そのものの評価)が30%、借地権が70%ということです。それだけ借地権というのは強い権利ということを意味しています。
建物の評価方法は土地に比べてシンプル
ちなみに、同様の調整は建物にも行われます。自宅や別荘など自己利用が目的であれば、固定資産税評価額そのものが評価額になりますが、アパートなど他人利用が目的の建物については、以下の数式で相続税や贈与税の計算上評価を行います。
アパートなどの建物評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は30%で固定されているので、100%賃貸利用であれば、
アパートなどの建物評価額=固定資産税評価額×70%
となります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている