相続土地の国庫帰属制度の承認申請ができるのは相続人のみ

相続土地の国庫帰属制度は、その承認申請ができる者を相続人に限っています。土地の取得原因については、相続のほかに遺贈も含まれています。言い換えれば、相続や遺贈によって土地を取得した相続人だけが国庫帰属制度を活用できるということです。

相続人以外への遺贈や死因贈与については受遺者や受贈者の意思でその土地の取得を決めて、その管理も引き受けたと考えられます。そのため、その土地が管理しきれないからといって国庫帰属制度で保護する必要性が薄いといえます。

民法 第986条
  1. 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。

もちろん売買や贈与などで取得した土地についても同様に国庫帰属は利用できません。自らの意思で取得した土地については、不要になったからといって国庫帰属で手放すことはできません。

一方で、相続人については相続放棄をしない限りは、利用価値や換価性が低いものまでやむを得ず相続したということも少なからず存在します。遺贈の場合も相続人に対する遺贈は結局相続放棄まで行わないと土地の相続からは逃れられません。

そのため、相続土地の国庫帰属制度の承認申請は、相続人に限って認められています。

共有だった土地が相続で単独所有になった場合

相続で土地を取得するには、相続でその所有権のすべてを取得するケースのほか、もともと相続人と被相続人の共有だったものが、相続によって相続人の単独所有になるということもあり得ます。こうした場合は、相続人が相続や遺贈で取得した持分については完全に自らの意思で取得したわけではない一方で、もともと持っていた共有部分については自らの意思で取得したものと考えられます。

そこで、このように相続によって土地の所有権の一部だけを取得したようなケースで相続によって取得した持分だけを国庫帰属させても、所有者不明土地の抑制という国庫帰属制度の目的を果たすことはできません。

そこで、国庫帰属制度では共有土地について、以下のように規定しています。

国庫帰属法 第2条

2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同行の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持ち分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。

相続以外の原因(売買や贈与など)によって相続物件の持分を取得した者も、相続人と共同で土地の国庫帰属のための承認申請ができるということが定められています。この場合は、売買等で持分を取得した者と相続や遺贈によって持分を取得した者が同一人物であっても適用されます。

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