相続土地の国庫帰属と相続放棄の違い

相続土地の国庫帰属と相続放棄は、ともに相続土地の所有や管理負担を免れる制度です。しかし、両者には大きな違いがあります。

相続放棄は、家庭裁判所での相続放棄の申述によって、初めから相続人とならなかったものとみなされます。相続人にならないということで、土地以外にも現預金、有価証券、その他の不動産など一切の資産(あれば借金などの負債)もすべて相続することはありません。

一方で、相続土地の国庫帰属制度は、特定の土地だけを対象にして、一定の要件を満たすことで、国に対象の土地を譲り渡す制度です。相続放棄と異なり、特定の土地だけをターゲットにできるので、現預金などほかの遺産の相続権を残したままで不要な(?)土地の相続だけを避けることができます。

相続放棄は1人当たり800円の印紙代や郵送料などはかかりますが、基本的に経済負担はありません。一方で、相続土地の国庫帰属制度は国に帰属させるにあたって、相続人が負担金の納付をすることが必要です。いらない土地だからといって、タダで国が引き取ってくれるというわけではないということです。

相続人全員が相続放棄をした場合の国庫帰属

法定相続人が全員相続放棄すれば、土地を含めて相続財産のすべてが国庫に帰属します。しかし、国庫に帰属する前に、相続財産法人の清算手続きや、特別縁故者への財産分与を経て、最終的に残った相続財産のみが国庫に帰属することになります。この意味でも、特定の土地を相続人の意思で直接国に譲り渡すことができる国庫帰属制度と相続放棄は異なります。