Last Updated on 2026年3月8日 by 渋田貴正
被相続人が海外に銀行口座を持っている場合、日本の相続手続きとは異なる対応が必要になることがあります。特に多いのが、日本で作成した遺産分割協議書を海外銀行が受け付けてくれないというケースです。
国際相続では、日本の法律だけでなく、銀行が所在する国の法律や銀行独自の内部規定が関係してきます。そのため、日本の銀行と同じ感覚で手続きを進めてしまうと、途中で手続きが止まってしまうことも珍しくありません。
この記事では、海外銀行口座の相続手続きの基本的な流れと、日本の遺産分割協議書が通用するのかという点について、実務上の注意点を解説します。
海外銀行口座の相続手続きの基本的な流れ
海外銀行口座の相続が発生した場合、まず銀行に被相続人の死亡を連絡することになります。銀行は死亡の連絡を受けると口座を凍結し、その後、相続手続きのための必要書類を案内してきます。
その書類を提出し、銀行側で相続人の確認ができれば、口座の払い戻しや相続人への送金、あるいは口座名義の変更といった手続きが進められます。
流れ自体は日本の銀行と大きく変わりませんが、提出書類の内容が大きく異なる点が国際相続の特徴です。日本では戸籍や遺産分割協議書で手続きが進むことが一般的ですが、海外銀行ではそれだけでは足りないケースが少なくありません。
日本の遺産分割協議書はそのまま使える?
日本で作成した遺産分割協議書が海外銀行でそのまま通用するかどうかは、銀行や国によって異なります。実務では、日本の遺産分割協議書だけで手続きが完了するケースはそれほど多くありません。
海外銀行では、日本の書類をそのまま受け入れるのではなく、英訳や公証、アポスティーユなどの追加手続きを求められることがよくあります。遺産分割協議書を英語などの現地言語に翻訳し、その翻訳文書に対して公証を付けるよう求められることもあります。
また、銀行によっては、日本の遺産分割協議書ではなく、銀行独自の相続申請書への署名を求められることもあります。この場合、相続人全員がその書類に署名し、場合によっては公証手続きが必要になります。
海外の銀行では日本の戸籍制度が理解されないこともある
海外銀行の相続手続きでよく問題になるのが、日本の戸籍制度です。日本では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集することで相続人を確定することができます。しかし多くの国では戸籍制度が存在せず、日本の戸籍を見ても相続関係が理解されないことがあります。
そのため海外銀行では、戸籍一式を提出しても相続関係が分からないとして、追加の説明書類を求められることがあります。実務では、相続関係を説明する宣誓供述書(Affidavit)や、弁護士によるレターなどを提出するケースもあります。
銀行や国によっては、現地の弁護士が関与して書類を整備することを求められる場合もあり、日本の相続手続きだけでは完結しないことがあります。
また、海外銀行では、日本のように遺産分割協議書を提出すれば払い戻しができるという仕組みになっていないこともあります。銀行ごとに相続手続きのルールが定められており、銀行指定の申請書や宣誓書の提出を求められることがあります。
また、口座残高が一定額を超える場合には、裁判所の手続きが必要になる国もあります。例えば英米法圏では、プロベート(Probate)と呼ばれる裁判所の相続手続きが必要になるケースがあります。
具体例として、ハワイでは一般に、銀行口座などの遺産が10万ドル以下であればSmall Estate Affidavitが利用できる場合があります。しかし、銀行口座やその他の財産の総額が一定額を超える場合には、裁判所でのプロベート手続きが必要になることがあります。
この場合、日本で遺産分割協議書を作成しただけでは手続きが進まず、現地の弁護士が裁判所手続きを行う必要が生じることもあります。海外銀行口座の相続では、このように現地の相続制度が関係してくるため、日本の手続きだけで完結しないケースも少なくありません。
このような場合、日本側で書類を整えるだけでは手続きが進まず、現地の弁護士や専門家と連携しながら手続きを進めることが必要になります。
海外銀行口座は相続税にも影響する
海外銀行口座にある預金も、日本の相続税の対象になる可能性があります。日本に居住する相続人が海外財産を取得した場合、その財産は原則として相続税の課税対象になります。
そのため、海外銀行口座の存在を把握しないまま相続税申告を行ってしまうと、後から修正が必要になることもあります。また、海外口座の残高は相続開始時点の為替レートで円換算する必要があります。
海外銀行口座の相続では、日本の書類がそのまま通用しないことや、翻訳・公証・アポスティーユなどの追加手続きが必要になることがあります。また、銀行の所在国によっては現地の弁護士との連携が必要になることもあります。
このように、国際相続では日本の法律だけでなく、外国の制度や銀行の実務も理解しながら手続きを進める必要があります。
当事務所では、海外資産を含む相続手続きについて、司法書士・税理士の立場からサポートを行っており、必要に応じて海外の弁護士や専門家と連携しながら対応しています。海外銀行口座の相続手続きや国際相続でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
