Last Updated on 2025年11月9日 by 渋田貴正
令和7年(2025年)4月1日から、消費税法の改正により「プラットフォーム課税」という新しい制度が始まります。
これは、海外の事業者が日本国内の消費者に行うデジタル配信サービス(アプリ販売、電子書籍、音楽ストリーミングなど)に関する消費税を、確実に徴収するための仕組みです。
消費税のプラットフォーム課税背景には、国境を越えたデジタル取引の急増があります。
この改正は、もともと平成27年の消費税改正で導入された「消費者向け電気通信利用役務の提供」に関する課税の仕組みをさらに発展させたものです。
当時は、海外の事業者によるデジタル配信でも、消費税の納税義務をサービスを受ける側(利用者)ではなく、サービスを提供する側(発信者)に転換していました。
令和7年からは、その納税義務をさらに一段階進め、特定プラットフォーム事業者に引き継がせる仕組みとしたのが今回の「プラットフォーム課税」です。
プラットフォーム課税前は、「消費者向け電気通信利用役務の提供」によって日本で納税義務がある海外企業が日本のユーザーにサービスを販売しても、日本の消費税の申告や納付が行われないケースがありました。その結果、国内事業者との間に課税上の不公平が生じていました。
この問題を解消するため、改正では「徴収が確実にできる側」、すなわちAppleやGoogleなどの大手プラットフォーム事業者に代わりに消費税を納めてもらう制度が導入されました。
つまり、この制度は「海外事業者による日本向けデジタル配信」を対象としたものです。
プラットフォーム課税の対象となるのは外国の会社だけ
一方で、日本国内で登記した法人や国内の個人事業主のアプリ開発事業者や配信事業者にはプラットフォーム課税は一切影響しません。なぜなら、今回の改正が消費税の申告義務のトレースが困難な国外事業者による日本国内向けサービス提供に限定された制度であり、国内で事業を行う事業者はすでに従来から自ら消費税の申告・納税義務を負っているためです。
ここが今回の改正で最も誤解されやすいポイントです。
このように書いてしまうと国内で登記されている会社の方は以下を読む必要はないかもしれませんが、参考までにご覧いただければと思います。
プラットフォーム課税の対象となる取引のイメージ
プラットフォーム課税の対象となるのは、次の4つの条件をすべて満たす場合です。
- 国外事業者(=日本の税法上の非居住者または外国法人)がサービスを提供している
- 日本国内の消費者向けである
- アプリストアやオンラインモールなどのデジタルプラットフォームを介して提供している
- 国税庁が指定する「特定プラットフォーム事業者」を通じて対価を受け取っている
たとえば、アメリカのアプリ会社が日本のユーザーにゲームアプリを販売する場合、AppleやGoogleを通じて代金を受け取っていれば、そのAppleやGoogleが日本の消費税を申告・納税します。
2025年4月段階で、特定プラットフォーム事業者として登録されているのは以下の4社だけです。いずれも「超」大手です。
| App Store Apple Books Apple Podcasts |
iTunes株式会社 |
| AWS Marketplace | アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 |
| Google Play | グーグル アジア パシフィック プライベート リミテッド |
| Nintendo eShop | 任天堂株式会社 |
プラットフォーム課税の対象となる国外事業者とは
ここでいう「国外事業者」とは、日本の税法上、所得税法における非居住者または法人税法における外国法人を指します。
- 非居住者(所得税法上):日本に住所や居所がなく、かつ1年以上日本に滞在していない個人
- 外国法人(法人税法上):日本国内に本店または主たる事務所を持たない法人
つまり、日本に拠点がなく、日本国内で恒常的に事業を行っていない個人・法人がこれに該当します。
たとえば、アメリカや韓国などで登記されたアプリ開発会社、海外の配信プラットフォーム運営会社などです。
逆に、日本に住所・本店・事業所がある企業や個人事業主は「国内事業者」とされ、今回のプラットフォーム課税制度の対象にはなりません。
今回の改正は、あくまで「国外事業者」を対象にした制度です。
したがって、日本国内でアプリを開発し、App StoreやGoogle Playなどで配信している国内企業や個人事業主は、今回の改正による影響を受けません。
| 区分 | 関係するか | 消費税を納めるのは誰か |
| 海外事業者(日本向けに配信) | 関係する | Apple・Googleなど特定プラットフォーム事業者 |
| 国内事業者(App Store経由で販売) | 関係しない | 国内事業者本人 |
| 国内事業者(自社サイトで販売) | 関係しない | 国内事業者本人 |
つまり、国内のアプリ開発者がAppleやGoogleのプラットフォームを利用して販売しても、自社が国内事業者である限り、自分で消費税を申告・納付するという点は従来どおりです。
なお、Apple社からの売上振込時に差し引かれる「App Store手数料」は、仕入税額控除の対象となる経費として計上する必要があります。
国外事業者が特定プラットフォームを通じてサービスを提供する場合は、以下のような取り扱いになります。
- プラットフォーム課税の対象となる取引については、国外事業者自身の申告・納税は不要
- 代わりに、AppleやGoogleなどの特定プラットフォーム事業者が日本の消費税を申告・納税
- 国外事業者がインボイス(適格請求書)発行事業者であっても、当該取引についてはインボイス発行義務なし
ただし、国外事業者が日本国内で別の課税取引(法人向けサービスなど)を行っている場合は、その部分については従来どおり申告・納税が必要です。
国際的なデジタル取引の課税関係は非常に複雑です。
自社が「国外事業者扱い」になる可能性がある場合や、課税の範囲に不安がある場合は、早めに専門家へご相談ください。
当事務所では、税理士・司法書士が一体となって、デジタルビジネス・海外取引・アプリ販売に関する消費税の実務や登記のご相談を総合的にサポートしています。
プラットフォーム課税制度の影響を正確に把握したい方や、海外展開を検討されている方は、どうぞお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
