Last Updated on 2025年7月9日 by 渋田貴正

海外から日本の不動産を持つなら「納税管理人」は必須

日本国内に不動産を所有していても、海外に住んでいる場合、日本の税金をきちんと納めるための体制が必要です。その際に重要となるのが「納税管理人(のうぜいかんりにん)」の制度です。

多くの方は、納税管理人というと「税務署に届け出ればいいのかな?」と考えがちですが、実は不動産を持っているなら、市区町村にも納税管理人の届出が必要なのです。

とくに、固定資産税や都市計画税、軽自動車税など、市区町村が課税主体となる税金については、市区町村に届出をしていないと、納税通知書が届かない、納付が遅れて延滞金が発生する、督促や差押えになるといったリスクがあります。

納税管理人とは?制度の基本

納税管理人制度の役割としては色々ありますが、主な役割の一つが日本に居住していない納税者(非居住者)に代わって、日本国内で税務に関する届出や納税手続きを行う代理人としての役割です。国税・地方税どちらにも制度があります。

区分 主な税目 届出先 根拠条文
国税(税務署) 所得税、相続税など 税務署 国税通則法第10条
地方税(市区町村) 固定資産税、都市計画税、軽自動車税など 各市区町村 地方税法第326条の4、他
(納税管理人)
所得税法 第107条
個人である納税者がこの法律の施行地に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人である納税者がこの法律の施行地にその事務所及び事業所を有せず、若しくは有しないこととなる場合において、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、その者は、当該事項を処理させるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければならない。

市区町村への納税管理人の届出が必要な理由

国税の手続きは税務署で済みますが、不動産にかかる固定資産税・都市計画税などは、市区町村が課税主体です。
そのため、不動産を所有している非居住者は、所有地の市区町村にも納税管理人の届出をしなければならないのです。

市区町村に届出をしていないと、納税通知書が宛先不明で戻ってしまい、未納のまま督促・延滞金が発生する事例もあります。

【実際に起こるトラブルの例】

  • 納税通知書が海外住所に届かず返送
  • 納税できず延滞金が加算
  • 督促状が届かず不在のまま差押え予告
  • 海外から手続きできず対応に数ヶ月

こうした事態を防ぐためにも、日本国内で税金を適正に納めるための「納税管理人」の届出がとても重要なのです。

海外在住の方が不動産を保有する場合の流れ

海外在住者が日本の不動産を購入または相続した場合、次のような流れで手続きを進めることになります。

  1. 所有権移転登記(司法書士)
    • 購入や相続時に登記を行う
    • 登記時に非居住者であることを確認
  2. 納税管理人の選任
    • 日本国内の家族や税理士などの専門家に依頼
    • 委任状の作成・印鑑証明等を準備
  3. 市区町村への届出
    • 固定資産税・都市計画税のために届出
    • 必要書類:納税管理人届出書、印鑑証明書、委任状など
  4. 国税の納税管理人届出(必要に応じて)
    • 所得税・相続税の納税が見込まれる場合
  5. 以後、納税通知書は納税管理人へ送付
    • 管理人が納税、または本人に連絡して納付をサポート

市区町村ごとに届出が必要?ポイント解説

日本では不動産の所在地によって課税市区町村が異なります。複数の不動産を異なる地域に保有している場合、それぞれの市区町村に納税管理人を届け出る必要があります。複数のマンション賃貸をする場合には、いくつかの自治体に届け出が必要です。(以下は3か所持っている人の例です。)

不動産の所在地 届出先 書式
東京都世田谷区 世田谷区役所 世田谷区指定様式
神奈川県横浜市中区 横浜市役所中区課税課 横浜市様式
大阪府大阪市中央区 大阪市中央区役所 大阪市様式

当事務所に依頼するメリット

  1. 税理士・司法書士のW資格による一貫対応
    • 登記から納税管理人届出、税金相談までワンストップで対応します。海外在住の方のための不動産所有の国内連絡先の設定も承っています。
  2. 全国の市区町村対応
    • 多数の自治体との手続き実績があり、各地の届出様式や傾向にも精通しています。
  3. 海外からのやりとりもスムーズ
    • 英語でのサポート、国際郵送手配、Zoomでの打ち合わせも可能です。
  4. 不動産購入から税務管理までトータルサポート
    • 不動産投資・相続による取得など、税務全体を見据えたアドバイスも得意です。

よくあるご質問(FAQ)

  1. 納税管理人は誰に頼めばいいのですか?
    A. ご家族でも構いませんが、税務や書類の対応に不安がある場合は、税理士・司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
  2. 一度届出すればずっと有効ですか?
    A. 原則として有効ですが、納税管理人の住所や氏名が変わった場合や、契約が終了した場合は、変更・廃止届出が必要です。
  3. 不動産を複数持っている場合、すべてに納税管理人が必要?
    A. はい、それぞれの所在地ごとに市区町村へ届出が必要になります。

海外から日本の不動産を保有・管理するためには、法的・税務的に正しい手続きが欠かせません。当事務所では、納税管理人の届出だけでなく、不動産登記・税務申告などもトータルで対応可能です。
海外にお住まいの方で日本の不動産をお持ちの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。国際対応も安心してお任せいただけます。

また、海外在住の方について不動産売買の仲介をする不動産会社の方からもお問い合わせも多くいただいています。お気軽にご相談ください!