Last Updated on 2026年2月6日 by 渋田貴正

個人の方にとって、相続や不動産の名義変更といった場面では、必ずといっていいほど「税金」と「登記」の両方が関係します。

また、会社を設立する方や法人を経営している方にとっても、設立手続きや組織変更など、税務と登記が同時に関係する場面は数多くあります。

しかし、多くの方は、税金のことは税理士へ、登記のことは司法書士へ、と別々の専門家に依頼するのが当たり前だと考えています。もちろん、この方法自体が間違いというわけではありませんが、実務上は、別々に依頼することで手間や時間が増えたり、思わぬ行き違いが生じたりするケースも少なくありません。

税務と登記は切り離せない関係にあります。依頼者にとって、税理士と司法書士の両方の資格を持つ専門家にまとめて依頼するメリットについて、分かりやすく解説します。

別々の事務所に依頼する場合との比較

項目 別々に依頼する場合 税理士・司法書士の両資格者に依頼する場合
窓口 2か所 1か所
相談時の説明 同じ内容を2回行うことが多い 1回で完結
連絡・調整 依頼者が間に入ることがある 原則不要
手続き設計 税務と登記が分断されがち 同時に設計
スピード 調整に時間がかかりやすい 早い
責任の所在 分散しやすい 明確

大きな違いは、手続き全体を「誰が把握しているか」という点です。別々に依頼した場合、それぞれの専門家は自分の分野を中心に判断するため、全体像を踏まえた設計にならないことがあります。

実務では、税務的には問題ないが登記ができない、あるいは登記はできたものの税務上思わぬ課税が発生した、というケースが見受けられます。

また、「それは税理士に聞いてください」「それは司法書士に聞いてください」と案内され、結果として依頼者ご自身が両者の間に入って調整することになる場合もあります。

このような行き違いは、最初から税務と登記を一体として設計することで防げるケースが少なくありません。

税理士と司法書士を同じ事務所に依頼するメリット

税理士と司法書士の両方の資格を持つ専門家に依頼する最大のメリットは、税務と登記を同時に考慮しながら手続きを組み立てられる点にあります。

相続・不動産の名義変更に関するケース

相続や不動産の名義変更の場面では、司法書士から「この内容で登記は可能です」と案内されたため手続きを進めたものの、後から税理士に確認すると「その形だと想定以上の税金がかかる可能性があります」と指摘されることがあります。

登記は完了しているものの、税務上は不利な形になってしまい、結果として「別の方法にすればよかった」という状況になるケースです。

海外案件に関するケース

海外に居住している方や、外国法人が関与する案件では、税務と登記の両方で国内案件よりも検討事項が増えます。

例えば、海外在住の方が日本で会社を設立する場合、税務上の居住者・非居住者の判定や課税関係を整理したうえで、登記上の役員構成や代表者の住所表記なども同時に検討する必要があります。

税務の整理だけを先に進めると、登記上必要な書類や手続きが後から問題になることがあり、逆に登記だけ先に進めると、税務上の取扱いに修正が必要になることもあります。

会社設立に関するケース

会社設立の場面で、税理士からは「節税の観点ではこの資本金額や役員構成が有利です」と説明を受け、その内容を前提に進めたものの、実際に登記を依頼したところ「その設計では定款の内容を変更する必要があります」「登記上その形は取れません」と言われ、設計を一から見直すことになるケースがあります。

税務だけを前提に組み立てた設計と、登記実務上のルールがかみ合わないことで、再度検討が必要になり、スケジュールが後ろ倒しになることも少なくありません。

また、費用面でも差が出ることがあります。税理士と司法書士を別々に依頼した場合、それぞれの事務所で初期相談や事実関係のヒアリング、資料整理が行われます。ワンストップ対応であれば、これらの作業を一度でまとめて行うことができるため、結果としてトータルの費用が抑えられるケースもあります。

もちろん、案件内容によっては費用が大きく変わらない場合もありますが、少なくとも二重に発生する作業を減らせる点は大きなメリットといえるでしょう。

「提携している専門家と連携」している事務所との違い

ホームページなどで、「税理士と提携しています」「司法書士と連携しています」と記載している事務所も多く見られます。

提携体制も有効な方法ですが、最終判断は別の事務所の専門家が行うため、回答までに時間がかかることや、微妙なニュアンスが伝わりにくいことがあります。一方で、両資格を持つ専門家の場合、その場で税務と登記の両面から判断できるため、スピードと一貫性に優れています。

会社設立、相続、不動産の名義変更、海外が絡む取引や相続など、複数の手続きが絡むケースでは、税務と登記をまとめて相談できる体制が特に有効です。

税務と登記は本来、切り離して考えるものではありません。
別々に依頼すること自体が誤りというわけではありませんが、手間やリスクを減らし、スムーズに進めたい方には、税理士と司法書士の両資格を持つ専門家への依頼がおすすめです。

当事務所では、税務と登記の両面からワンストップでサポートしております。
会社設立、相続、不動産、国際案件などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。