Last Updated on 2026年1月18日 by 渋田貴正

空き家・空き地バンクを利用して不動産を取得したものの、「登記はまだ手を付けていない」「とりあえず使い始めている」という方は少なくありません。自治体が関与している制度であることから、「後でまとめてやれば大丈夫だろう」と考えてしまいがちですが、実務上はここに大きな落とし穴があります。空き家・空き地バンクは不動産取得の入口としては非常に有用な制度ですが、登記までを含めて完結する仕組みではありません。特に贈与や無償譲渡の場合、登記を後回しにすることで、後から手続が一気に重くなるケースが多く見られます。

空き家・空き地バンクでは登記までやってくれない

空き家・空き地バンクを通じて不動産を取得する方法は、実務上は非常にシンプルです。無償で譲り受けるか、有償で購入するかのいずれかです。無償で譲り受ける場合は法律上の「贈与」に当たり、有償で取得する場合は「売買」として扱われます。空き家・空き地バンクという名称から、特別な取得方法があるように感じられることもありますが、法的な整理は通常の不動産取引と変わりません。

ここで押さえておくべき点として、空き家・空き地バンクは登記手続に基本的に関与しないという点です。自治体は情報の集約と公開、場合によってはマッチングの補助を行う立場にとどまり、売買や贈与の契約内容、ましてや所有権移転登記を代行することはありません。空き家・空き地バンクに登録されているからといって、登記や権利関係に問題がないとは限りません。自治体は権利整理までを前提に制度を運営しているわけではなく、登記上の課題を抱えた物件が登録されていることも珍しくありません。

 

自治体によっては、空き家・空き地バンクの利用に関連して、司法書士などの専門家を紹介することがあります。ただし、これはあくまで相談先の案内にとどまり、登記手続そのものを自治体が手配するわけではありません。

不動産会社が関与している場合でも同様です。不動産会社は仲介や条件調整を担うことはあっても、登記申請そのものは専門家の領域であり、自動的に誰かがやってくれるものではありません。「自治体が関与している」「不動産会社が入っている」という安心感から、登記手続きが宙に浮いてしまうことが、空き家・空き地バンク案件では非常に多いのが実情です。

空き家・空き地バンクで発生しうる登記上の問題

相続登記が未了のケース

空き家・空き地バンクで取得される不動産、とりわけ無償譲渡や贈与の場合、そもそもすぐに登記できないケースが少なくありません。その典型例が、名義人がすでに亡くなっているケースです。登記簿上の所有者が被相続人のままで、相続登記が未了になっている場合、贈与以前に相続関係を整理する必要があります。相続人が複数いる場合には、全員の関与が前提となり、話し合いが長期化することもあります。空き家であるがゆえに権利関係が止まっている可能性があります。この状態を解消しない限り、売買や贈与登記といった次のステップに進むことはできません。

建物が未登記のまま使われているケース

空き家バンク案件では、建物が未登記のまま長年利用されてきたケースも珍しくありません。固定資産税は課税されているため、登記されているものと誤解されがちですが、実際には登記簿が存在しないということもあります。この場合、所有権移転登記の前提として、建物の表題登記を行う必要があります。表題登記は土地家屋調査士の業務となり、測量や現地確認が必要になることが多く、時間と費用が想定以上にかかることもあります。

不動産を取得する人が海外在住であるケース

海外に住んでいるからといって、空き家・空き地バンク自体を利用できないわけではありません。自治体の多くは、利用者の居住地を日本国内に限定しておらず、海外在住者が取得を検討するケースも実際にあります。

ただし、海外在住者が空き家・空き地バンクを利用する場合、登記手続では国内在住者とは異なる注意点があります。日本の印鑑証明書が取得できないため、在外公館での署名証明書が必要になることがあります。また、住民票がないため、住所の証明方法も工夫が必要です。これらの点を理解しないまま話を進めると、「書類が足りない」「やり直しが必要」といった事態になりがちです。海外からの利用自体は珍しいものではありませんが、国内案件と同じ進め方は通用しないという認識が重要です。

登記を後回しにすると何が起きるか

登記を後回しにした結果、よくあるのが、贈与者や関係者が亡くなってしまい、相続関係がさらに複雑になるケースです。そうなると、当初は比較的簡単だったはずの手続が、相続人調査や遺産分割の問題に発展し、時間も費用も大きく増えてしまいます。「無償で譲ってもらえたはずなのに、結局手続が進まない」という状況は、決して珍しいものではありません。

空き家・空き地バンクは、地域政策として非常に意義のある制度です。しかし、登記や税務といった法的な整理は、制度の外側にあります。税金についても簡単に整理しました。

取得形態 立場 主に問題となる税金
有償(売買) 譲渡者
(売る側)
譲渡所得税
(所得税・住民税)
譲受者
(買う側)
不動産取得税
無償(贈与 譲渡者
(あげる側)
原則なし
譲受者
(もらう側)
贈与税
不動産取得税

特に海外在住者が関与する場合や、相続未了・未登記建物が絡む場合には、早い段階で専門家が入るかどうかで、その後の負担が大きく変わります。もらってから考えるのではなく、もらう前、あるいは取得を検討している段階で整理することが、結果的に一番スムーズです。

空き家・空き地バンクを利用した不動産取得や贈与について、登記の進め方に少しでも不安がある場合は、早めにご相談ください。当事務所では、国内外の事情を踏まえつつ、空き家バンクの利用にともなう登記や相続登記、贈与税などの税務を一体で確認しながら進めることで、安心して次のステップに進めるようサポートしています。