Last Updated on 2025年9月12日 by 渋田貴正

合同会社を設立するには、登記申請にあたり「本店所在地」だけでなく、代表社員の住所も登記が必要となります。日本に住民票がある方なら、その住所を登記すればよいのですが、海外在住の方は日本に住民票が存在しないため、別の方法で住所を証明しなければなりません。特に「海外在住の日本国籍の人」と「海外在住の外国籍の人」とでは準備すべき書類が異なります。

合同会社設立時必要な住所の証明書

合同会社の場合、設立登記の段階では社員の住所を証明する書面は提出不要です。もっとも、会社の印鑑を登録する際には、代表社員について「住所を確認できる書類」を添付する必要があります。合同会社設立時に印鑑届は不要とはいえ、一般的には印鑑届を行うケースが大半です。

日本在住の方であれば、通常は市区町村で発行される印鑑証明書に住所が記載されているため、これがそのまま住所証明として利用できます。

一方、海外在住の方は印鑑証明書が存在しないため、代わりに在外公館で発行される署名証明書を用いることになります。ただし、この署名証明書には住所が記載されない場合があるため、その場合は在留証明書や現地の住民票相当書類を併せて提出し、住所を証明する必要があります。

海外在住者の場合でも例外はなく、日本国籍・外国籍を問わず、信頼できる公的書面を提出しなければなりません。

認められる住所証明書類の種類と国籍ごとの違い

在留証明書(日本国籍の人)

最も代表的なのが、日本大使館や領事館が発行する「在留証明書」です。これは現地に居住している事実を日本政府が証明するもので、日本国籍の人にとって登記で最もスムーズに受理されます。

各国の日本大使館や総領事館が発行する署名証明書には住所が記載されていないため、住所の証明のために別途在留証明書が必要となります。

現地の住民票に相当する書類(外国籍の人)

外国籍の方の場合、日本の在留証明書は利用できません。そのため、現地自治体が発行する住民票に相当する書類を用意するのが一般的です。
例えば、ドイツの「Meldebescheinigung」、フランスの「Attestation de domicile」などがこれにあたります。

公的機関などの発行する住所が記載された書類

  • 税務当局が発行する納税証明書(住所記載あり)
  • 公営の保険証や年金証書、光熱費の領収書など(住所記載あり)

これらは住所確認資料として添付できる場合があります。国によっては上記のような公的な住所証明がでないこともあるため、そういった場合にはこのような書類で間接的に住所を証明することも認められます。

ただし、国や登記官の判断に左右されるためあらかじめ確認が必要です。

公証人宣誓供述書

アメリカ、カナダ、オーストラリアなど住民登録制度が明確でない国では、公証人の前で住所を宣誓し、その宣誓供述書(Affidavit)を登記資料に用いることもあります。さらに在外公館での認証を加えると受理されやすくなります。

例えば、アメリカ在住の日本国籍の方が合同会社を設立する場合、日本領事館で「在留証明書」と「署名証明書」を取得しておくのが最も安心です。これらを揃えておけば、登記上の住所証明と印鑑登録の双方を一度に解決できます。

一方で、アメリカ在住の外国籍の方が合同会社の社員になる場合は、現地の州や市が発行する住民票に相当する証明書を用意する必要があります。制度が整っていない州では、公証人による宣誓供述書を準備し、日本語訳を添付して提出するケースも少なくありません。

このように、同じ海外在住でも「日本国籍か外国籍か」によって準備すべき書類が異なり、また登記官の判断も加わるため、事前の確認が重要です。

書類の種類 主に対象となる国籍 発行主体 住所証明書 翻訳
在留証明書 日本国籍 日本大使館・領事館 可能 不要
署名証明書 外国籍 現地公証人 住所が記載されていれば可能 必要
現地住民票 外国籍 現地自治体 可能 必要
納税証明等 日本国籍・外国籍 現地税務当局 必要
宣誓供述書 日本国籍・外国籍 現地公証人 △(在外公館認証があると有利) 必要

海外在住で合同会社を設立する場合、日本国籍か外国籍かによって必要書類が異なり、準備方法も変わります。特に日本国籍の方は「署名証明書」と「在留証明書」を同時に取得しておくことがスムーズです。

当事務所では、国籍や居住国ごとの違いを踏まえ、登記官が求める水準に合わせた書類準備をサポートしています。海外からでも確実に合同会社設立を進められるようにお手伝いしますので、ぜひお気軽にご相談ください。