Last Updated on 2025年8月27日 by 渋田貴正

そもそもホーム・リーブとは?

「ホーム・リーブ(Home Leave)」とは、外国本社から日本に派遣された社員が、一定期間勤務後に本国へ一時帰国する際に、会社が旅費を負担する制度です。これは単なる旅行ではなく、異文化・気候など環境変化に配慮した福利厚生的性格を持ち、税務上も特別な扱いがなされます。

ホーム・リーブ旅費の税務上の位置づけ

原則としてプライベートの旅費は給与課税

会社から従業員に支給される金銭や経済的利益は、基本的には「給与所得」として課税されます(所得税法36条1項)。ここでいう「経済的利益」には、現金だけでなく、会社が負担した旅費や宿泊費、物品の支給なども含まれます。

たとえば、社員がプライベートで海外旅行に行く際に、会社がその航空券代を負担した場合、その支給額は「労務の対価」とみなされ、給与として課税されます。これは、業務に直接関連しない支出であっても、会社が社員個人の利益のために金銭を提供していると評価されるからです。

また、この「原則課税」の考え方は外国人社員に限らず、日本人社員にも同様に適用されます。会社が帰省費用を負担する場合や、単なる慰労目的で旅費を支給する場合も、法律上は給与扱いとなり、課税対象になります。つまり「勤務と直接関係がない」「就業規則などの制度的な根拠がない」旅費支給はすべて課税される、というのが原則ルールです。

特例:外国人派遣社員のホーム・リーブ旅費

一方で、外国から派遣され日本で勤務している社員に関しては、例外的に非課税扱いが認められる場合があります。

この特例は、外国人派遣社員が長期間にわたり本国を離れて勤務することの特殊性に配慮した制度です。異なる言語、文化、生活環境の中で勤務することは精神的・肉体的に負担が大きく、定期的に本国に帰省することは労働環境を維持する上で必要と考えられています。そのため、一定条件のもとで支給されるホーム・リーブ旅費は「福利厚生」としての性格が強く、給与課税から除外するのが妥当と判断されています。

非課税とされるための条件(詳細)

  1. 外国本社などから日本へ派遣された社員であること
    • 日本の会社に直接採用された外国人社員は対象外です。本国法人から「派遣」という形で日本に勤務している者である必要があります。
  2. 就業規則などに制度が明文化されていること
    • 会社が明文化した制度として整備されている必要があります。単発的・裁量的な支給では「特例の適用外」となり、課税されます。
  3. 概ね1年以上勤務ごとに帰国すること
    • 短期間で頻繁に帰国する場合には認められません。おおむね1年以上勤務した後に付与される休暇帰国であることが必要です。
  4. 本人と生計を一にする家族の往復旅費であること
    • 本人のみならず、同居している配偶者や子どもの分まで非課税に含まれます。ただし、親戚や友人の旅費は含まれません。
  5. 経済的かつ合理的な範囲の費用であること
    • 「往復航空運賃」など必要最小限の金額に限られます。ビジネスクラスやファーストクラスを利用する場合には、エコノミークラス相当額を超える部分は給与課税される可能性があります。
    • また、経由地での宿泊が不可避の場合は宿泊費も含まれますが、観光目的での滞在などは対象外です。

ポイント整理

判定基準 内容
派遣元 外国本社からの派遣であること
制度整備 就業規則等に制度化されていること
勤務期間 おおむね1年以上
対象範囲 本人+生計を一にする家族
費用水準 経済的・合理的な運賃等のみ

このように、ホーム・リーブ旅費の非課税は「例外」であり、厳格な条件を満たす場合に限って認められます。

日本で採用された外国人社員の場合

日本の会社に直接採用された外国人社員には、この特例が適用されません。ホームリーブ旅費は給与として課税されます。

課税・非課税の比較表

区分 対象社員 支給の背景 非課税となる条件 課税/非課税
外国人・派遣 外国本社から派遣された社員 ホームリーブ制度 要件すべてを満たし、合理的な往復旅費である場合 非課税
外国人・採用 日本で直接採用された外国人社員 ホームリーブ制度(就業規則あり) 特例なし 課税(給与)
日本人社員・帰省 日本で採用された社員 私的な帰省 例外的措置なし 課税(給与)
単身赴任者・会議付き帰宅 単身赴任中の日本人社員など 会議など業務上の帰国に付随して帰宅 会議等による職務上の必要がある場合に限り、帰宅旅費は非課税  非課税(条件付き)

実務上の注意点

  1. 合理的な範囲の判断
    • ビジネスクラス以上の高額運賃は、合理的な範囲を超えると判断され、超過部分は課税対象となります。
  2. 家族旅費の範囲
    • 生計を一にする家族(配偶者・子)の往復分まで対象。対象外の親族・友人の費用は認められません。
  3. 就業規則等で明文化を
    • 制度として整備されていない、個別対応としての支給では非課税と認められない可能性があります。
  4. 経費処理・証拠書類の明示
    • 税務調査に備えて、就業規則、旅費申請書、航空券や領収書など、根拠資料の保存が重要です。
  5. 単身赴任者の業務上帰宅
    • 会議出席など業務と関連する帰宅には特例的に非課税になるケースもあるため、業務との関係性を明確に。

当事務所では、外国人社員の税務対応や就業規則整備、日本人社員の帰省・単身赴任対応まで、税理士・司法書士の両面から丁寧にサポートいたします。制度設計や実務処理でお悩みの企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。