Last Updated on 2025年7月7日 by 渋田貴正
外国人が日本の不動産を買うことはできる?
「外国人でも日本で不動産を買うことはできるのでしょうか?」といった質問をよくいただきます。結論から言えば、現在の日本では、外国人であっても原則として土地や建物の所有は可能です。ただし、過去には制限がありましたし、将来的には一部制限がかかる可能性もあります。また、購入後の登記や税務についても、日本人と同じように対応しなければならない点が多く、十分な理解と準備が必要です。
以下では、外国人による日本の不動産取得に関する法律の歴史と現行法、登記・税金の実務的なポイントについて、わかりやすく解説します。
日本の土地所有と外国人に関する法制度の変遷
日本では、明治時代には外国人が日本の土地を取得することは明確に禁止されていました。これは、「明治6年太政官布告18号11条」によって規定されていたものです。この布告では、「外国人に対して土地やその権利の売買・質入れ等は一切認められない」とされていました。
その後、以下のような法改正が続き、現在のように外国人も土地を所有できるようになりました。
年代 | 法律・布告 | 内容 |
明治6年 | 太政官布告18号 | 外国人による土地取得を全面禁止 |
明治43年 | 外国人の土地所有権に関する法律 | 太政官布告を廃止 |
大正15年 | 外国人土地法(大正14年法律42号) | 外国人も土地所有可能に(相互主義・安全保障上の制限あり) |
このように、現在では外国人も土地を取得できるのが原則ですが、外国人土地法では以下のような例外規定も設けられています。
外国人土地法による例外規定
大正時代の外国人土地法では、以下のような制限が設けられる可能性があると定められています。
- 相互主義による制限(第1条)
ある国が日本人に土地の所有を認めない場合、その国の国民に対しても日本国内での土地取得を制限できる。 - 国防上の必要がある地域の制限(第4条)
軍事施設周辺など、国防上重要な区域については、外国人による土地取得を勅令で制限できる。
ただし、これらの規定は現在まで実際に運用された例がないため、実務上は外国人による土地取得が広く認められています。
令和の新法:土地利用状況の調査制度とは?
令和3年に成立した「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」では、新たに「注視区域」や「特別注視区域」が設けられました。
この法律では、対象区域内の土地や建物の所有者が外国籍または外国との関係が深い場合に、国が以下を行うことができます。
- 所有者の氏名や国籍の調査
- 利用目的の報告の要請
- 必要に応じた勧告・命令(※強制売却や取得制限ではない)
つまり、外国人の土地所有を禁止するものではなく、あくまで利用目的の確認を目的とした法制度となっています。
外国人が不動産を取得した場合の登記と税務のポイント
外国人が日本で不動産を購入した場合、登記手続や税金面では日本人と同様の対応が必要です。具体的には以下のような点に注意が必要です。
所有権移転登記が必要
日本で不動産を取得した場合は、法務局にて所有権移転登記の申請を行う必要があります。外国人であっても、本人確認書類や印鑑証明書に相当する書類(例:サイン証明書、パスポートなど)を提出し、正確な登記をしなければなりません。
また、住所や国籍の記載についても注意が必要です。登記簿には、外国籍である旨や現住所(外国の住所)も記載されるため、翻訳文の添付などが求められる場合もあります。
不動産取得税・登録免許税がかかります
外国人でも日本国内で不動産を取得すれば、日本人と同様に不動産取得税や登録免許税が課税されます。
税金の種類 | 概要 | 税率(標準) |
不動産取得税 | 不動産を取得したときに都道府県から課税 | 土地・建物ともに評価額の3〜4% |
登録免許税 | 登記申請時に必要な国税 | 所有権移転:固定資産評価額の2%(軽減あり) |
また、不動産を保有している間は固定資産税・都市計画税が毎年課税されます。これも所有者が外国人かどうかにかかわらず、等しく課税されます。
法人による取得や賃貸も可能
外国の法人が日本で不動産を取得することも可能ですが、その場合は外国会社の登記(会社法第818条など)や納税管理人の届出(所得税法第117条など)が必要となることがあります。
特に、外国法人が賃貸経営を行うような場合には、法人税や源泉徴収のルールも絡むため、税務の専門家による事前の相談が非常に重要です。
以下の表は、外国人が日本の不動産を購入する一般的な流れです。
ステップ | 内容 | 注意点 |
1 | 物件選定・契約 | 翻訳対応、司法書士・専門家の確認が必要 |
2 | 登記申請 | サイン証明・パスポートなどを準備 |
3 | 税金の納付 | 登録免許税・不動産取得税に注意 |
4 | 保有・運用 | 固定資産税、賃貸収入の申告が必要な場合も |
外国人が日本で不動産を購入する場合、法律上の制限はほとんどありませんが、登記実務や税務対応は日本独自の制度が多く、専門家のサポートがあると安心です。当事務所では、外国人の方や外国法人の不動産取得に関する登記・税務のご相談を多数取り扱っております。サイン証明書の取得方法や登記書類の翻訳にも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。