Last Updated on 2025年2月2日 by 渋田貴正
マカオ籍の被相続人の相続放棄の可能性
日本在住のマカオ籍の方が亡くなったときの相続放棄の可能性についてまとめました。
家事事件手続法
第3条の11 裁判所は、相続に関する審判事件(中略)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。 |
上記の通り、日本に最後の住所があった場合には、マカオ籍の被相続人であっても日本の家庭裁判所が管轄権を有します。
しかし、もう一点そもそもマカオの法律で相続放棄という制度があるかどうかという問題があります。いくら日本の家庭裁判所が管轄権を有していても、そもそも本国の法律で相続放棄が定められていなければ相続放棄をすることはできません。
この点マカオの法律では、日本と同様に相続放棄が認められています。
マカオは国ではなく、中国のマカオ特別行政区です。歴史的な背景からマカオは「一国二制度」に基づき、高度な自治権を持ち、独自の法律制度を維持しています。返還前はポルトガルの統治下にあり、返還後も中国本土の法律ではなくポルトガル法の影響を受けた法律体系が適用されています。そのため、マカオの相続法は中国本土のものとは異なり、大陸法に基づく法体系を採用しています。
ただし、マカオについては二重国籍の問題もあります。返還後、マカオの住民は中国国籍とみなされるが、ポルトガル籍を保持している場合もある。被相続人がポルトガル籍なのか、中国籍なのかで適用法が異なるため、確認が必要です。ポルトガル籍であればポルトガルの法律が適用され、中国籍であればマカオの法律が適用されます。
日本で亡くなったマカオ国籍の被相続人については日本の家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることが法律上可能です。
ただし、マカオで相続放棄が認められているということを証明するためにマカオの法律を調査して、該当する条文を提出するなど、日本国籍の被相続人の相続放棄よりも必要書類が多くなります。
マカオ国籍の被相続人の相続放棄については、当事務所のように国際相続に詳しい専門家に依頼することをおすすめします。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。