相続放棄が確定した後の撤回はできない

いったん相続放棄の審判が確定した場合は、その相続放棄を撤回することはできません。たとえ熟慮期間内であっても、それは同じです。

例えば、借金など負の財産が多いと思って相続放棄をしたら、その後多額の現預金の存在が分かって、やはり相続したいということは認められません。こうした財産を調査するために熟慮期間が設けられているので、こうした個々の事情で相続放棄の撤回を認めてしまうと、相続放棄という制度の意味自体がなくなってしまいますし、他の相続人や次順位の相続人の立場も不安定になってしまいます。

ただし、例えば成年後見人が成年被後見人に代わって相続放棄をした場合で、成年後見監督人の同意を得ていなかったようなケースでは取り消しは認められます。このような特殊なケースを除いて、いったん確定した相続放棄の審判を取り消すことはできません。

遺産がどれだけあろうと相続放棄をすると決めているようなケースを除き、相続放棄をするかどうかということは熟慮期間中に慎重に決定しなければならないということです。

家庭裁判所に提出してから、受理される前までの撤回は可能

いったん家庭裁判所に相続放棄の申立書を提出してから、受理されるまでの間であれば、相続放棄の取り下げをすることができます。「受理」というのは、相続放棄の申し立てをした相続人に対して家庭裁判所が意思確認をして、正式に相続放棄の申述を受理したタイミングです。家庭裁判所に申述書を提出しただけであれば、書類の受付が済んだだけで。「受理」ではありません。

民法

第919条
  1. 相続の承認及び放棄は、第915条第一項の期間(熟慮期間)内でも、撤回することができない。